石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

ドラァグ嫌悪に市長が一休さんのごとく切り返す チリ・バルパライソ

第156話 一日お役人と一休人形

チリの港湾都市バルバライソのホルヘ・チャルプ(Jorge Sharp)市長が、お祭りでドラァグクイーンとダンスを踊りました。同国の右派上院議員は、不適切だとしてこれを非難。チャルプ市長は動じず、まるで一休さんのような鮮やかな切り返しを見せています。

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バルパライソ市のアレホ・バリオス公園(Parque Alejo Barrios)では今年、9月16日から22日にわたって、チリの祝日「フィエスタス・パトリアス」のお祭りが開かれていました。このイベントの開会式のため同公園を訪れたチャルプ市長は、会場のさまざまな場所に足を運び、ドラァグクイーンの「アナリー・フォンテーヌ(Analy Fontaine)」さんとこんな風にダンスを踊ったりしていました。

これらの画像を見て噛みついたのが、同国の右派政党、独立民主連合のイバン・モレイラ(Iván Moreira)議員。以下のように画像つきのツイートで市長を攻撃しています。

一部訳:

ああ、@JorgeSharpには、travesti(訳注:直訳すると『異性装者』ですが、本来ドラァグクイーンを指して使う語ではないようです。詳しくは後述)とクエカ(訳注:チリの民族舞踊)を踊ることはできるよ。だが、わたしたちの伝統を踏みつけることは許されない。travestiの衣服は承諾できるものではなく、フィエスタス・パトリアスは売春宿ではない。

Sí @JorgeSharp puede bailar cueca con un travesti,pero no puede pisotear nuestras tradiciones.Vestimenta del travesti inaceptable y Fiestas Patrias no son una casa de huifa.

ドラァグパフォーマンスも民族舞踊も売春とは何の関係もないはずなのに、いきなり「売春宿」などと言い出してしまうこの論理の飛躍っぷりときたら。シスヘテ規範通りではないジェンダー表現はすべて放蕩とみなして糾弾するという、保守派お得意のやり口ですな。

さて、これに対して市長はどうしたか。即興の歌(paya)を作って、こう返したんです。

訳:

人の尊厳は衣服にあると思っている

あの極右の

怠慢による無知よ!

¡Supina ignorancia
la de esa ultraderecha
que cree que la dignidad
va en la vestimenta!

一休さんの袈裟の話かと思っちゃったわ。

なお市長と踊ったドラァグクイーンの「アナリー・フォンテーヌ」こと本名パトリシオ・メディナ(Patricio Medina)氏によれば、モレイラ議員のツイートは用語の選択においても不正確だったようです。議員の使った"travesti"という語は「性別移行の途中にあり、望みの性別で24時間実生活を送っている人」を指すものであって、メディナ氏のような"transformista"、つまり「変身をする俳優で、ショウをするためにステージに上がる人」とは別物だとのこと。要するにモレイラ議員は、トランスジェンダーの人々とドラァグクイーンをごっちゃにするという、たいへんありふれた間違いをしていたということですね。同議員にはこれを機にそのへんの用語の勉強をしてもらって、さらにアニメの一休さんでも見て人生についての考えを深めてもらうといいんじゃないかしら。たぶん無理だと思うけど。