石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

※ネタバレ※『アオイシロ』エンディング一覧と考察

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これまでプレイ日記やレビューにおいて何度か、『アオイシロ』は「ノーマル&バッドエンドに芸がない」と書いてきました。どこがどのように芸がないのか、エンディング一覧を提示した上でもう少し具体的に書いてみます。以下、完全ネタバレ(『アカイイト』のネタバレも含みます)なので、ネタバレを避けたい方は読まないことを推奨します。
※以下ネタバレ※

『アオイシロ』エンディング一覧

「結末一覧」で見ることができる全てのエンディングのタイトルおよび内容です。HはHAPPY END(トゥルーED)、NはノーマルED、BはバッドEDを指します。

ページ-段-列 分類 タイトル 内容
1-1-1 N 青い城へ――乙姫を残して 嵐を避け早めに帰還。
1-1-2 B 鬼来たる 汀に切られたカヤが鬼になって終わり。梢子は動けない。
1-1-3 N 眠り姫 保美が目を覚まさなくなる。百子、号泣。
1-1-4 B 深い処へ沈み逝く 梢子、保美に精気を吸われて終わり。
1-1-5 N 青と白の空の下へ 嵐が来てから帰還。
1-1-6 B 既視と重なる 梢子、贄として根方宗次に切り殺される。
1-1-7 B 白む彼方の日が射す前に 魍魎に海に引きずり込まれて終わり。
1-2-1 B 前門の虎・後門の艮 オニワカに潰される。飛び散る血。
1-2-2 B 彼女の内に在る<<力>> 梢子、クロウサマ(コハク)から保美をかばって切り殺される。
1-2-3 B 失敗する魔多牟 保美が魔多牟に魂を取り込まれる。
1-2-4 B 歪む慟哭 梢子、コハクに切り殺される。「痛みが……ないなんて……嘘じゃない……」
1-2-5 N あなたの形の心の隙間 梢子、ひとりで浜に流れ着く。保美のことが思い出せない。
1-2-6 B わだつみにそのみをささぐ 保美が海に飛び込み、梢子は後を追う。
1-2-7 H 期待のホープがもうひとり 保美トゥルーED。元気になった保美が剣道をやるようになる。
1-3-1 B 鬼の群れ 魍魎に囲まれて終わり。
1-3-2 B 常咲きの花の落ちるとき 魍魎に囲まれて終わり。
1-3-3 N 別れの季節 ナミを残して帰還。
1-3-4 N 禁門 ナミを根方の館に残し、梢子だけ帰る。ナミは根方の門から外へ出ることはなかった。
1-3-5 B 海淵に住まう夷の王 馬瓏琉、戟でカヤを刺し殺す。「地獄の門が開かれた]とか言ってあっけなく終わり。
1-3-6 B 一切の希望を捨てよ 門が開くだけでなんか悲劇ぶって終わり。
1-3-7 B 剣鬼と既視感 カヤ、宗次に首を刎ねられる。
1-4-1 B 根方の祭儀 馬瓏琉、戟でナミを刺し殺す。梢子は<<剣>>で魔多牟と戦おうとするが魂を喰われる。
1-4-2 N 流れに流れ ナミ、梢子の腕の中で死ぬ。
1-4-3 H はじめての冬休み ナミトゥルーED。冬休みにナミと再開。
1-4-4 N 流れ行く時流れる景色 合宿を切り上げ帰還。ナミの話をしながら帰る。
1-4-5 B 海の藻屑 魍魎に海に引きずり込まれて終わり。
1-4-6 B 花の赤く散るらむ 森で魍魎に囲まれて終わり。
1-4-7 B 満ち行く潮 踏み石の途中で潮が満ちてきて終わり。
1-5-1 B 風に散り落つ 卯良島で風に吹き飛ばされて死ぬ。
1-5-2 B 海神の犠牲 海神の磐座で、魍魎に海に引きずり込まれて終わり。
1-5-3 N 隻眼白髪の鬼使い コハクに<<剣>>を渡し門を閉じてもらう。汀は<<剣>>を取り返しに行き、梢子と別れる。
1-5-4 B 閉ざされる未来 梢子、<<門>>を閉じようとするも<<剣>>の力に取り込まれる。汀「とりあえず、殺し合いましょうか」
1-5-5 H 好敵手 汀トゥルーED。梢子、剣道の全国大会で汀と再開。
1-5-6 N 夢の縁(よすが)を洗う海風 ナミを残して帰還。
1-5-7 B 双鬼相打つ コハクVS剣鬼。カヤは<<剣>>でコハクを刺す。梢子、狂ったカヤに切り殺される。
2-1-1 B 丑寅の路 カヤ、オニワカに拳を叩きつけられ死ぬ。梢子もオニワカに捻り潰される。
2-1-2 B 椿の如く石榴の如く 宗次から梢子をかばったカヤ、首を刎ねられる。
2-1-3 B <<剣>>は沈まず 海に沈みかけるもコハクに助けられる。梢子はコハクを馬瓏琉と間違え<<剣>>で切りかかるが、<<力>>に飲み込まれ鬼になる。
2-1-4 B 踏み石渡るは誰そ彼 踏み石のところにコハクが来る。梢子はコハクを馬瓏琉と間違え<<剣>>で切りかかるが、<<力>>に飲み込まれ鬼になる。
2-1-5 B 海の石榴となりて 梢子、<<剣>>を手にするも宗次に首を刎ねられる。
2-1-6 B 力及ばず 梢子、根方の祭殿にて馬瓏琉の戟に刺され死ぬ。
2-1-7 N <<剣>>憑き 梢子、剣鬼ショウコと化してカヤを殺す。
2-2-1 B ふたりを繋ぐ一振りの刃 カヤ、我が身とともに剣鬼ショウコを刺し貫いて自害。つか、心中。
2-2-2 B その瞳に映る星 根方の祭殿にて、カヤ、宗次に首を刎ねられる。梢子は宗次に襲いかかるも負け、贄となる。
2-2-3 H 不器用ものが針を持ち カヤトゥルーED。鍼灸師見習いとして働くカヤ。
2-2-4 B 散り逝く宿命に抗えど 踏み石のところに、剣鬼と化したカヤ登場。梢子、切り殺される。
2-2-5 B 鉄(くろがね)の式神(しき) コハクはカヤに切り殺され、梢子は魍魎に囲まれて終わり。
2-2-6 N その面影は遥か遠くに 嵐の中帰還。帰る前にコハクを探すがみつからない。
2-2-7 N 魔多牟とオニワカ <<門>>が閉じ、コハクと馬瓏琉は海の中に取り残される。梢子と汀は助かる。
2-3-1 N 九郎、狂う。 コハクが鬼と化す。梢子は汀に助けられ、海が閉じる。
2-3-2 H 未だ眠らず コハクトゥルーED。剣道の大会で優勝した梢子を、コハクがスカウトしに来る。
2-3-3 B 群がる小鬼 卯良島にて魍魎に囲まれて終わり。
2-3-4 B <<剣>>は鬼王の黒き手に 津波に飲まれ日本沈没。
2-3-5 B 嵐の中を越えていく 梢子、波にさらわれて死ぬ。
2-3-6 B 蜘蛛討ち切断 梢子、宗次に木刀を切断され、首を刎ねられる。
2-3-7 H うなさかをこえるきざはし グランドエンド。ラスボスを倒した後、ナミと共に無事砂浜に打ち上げられる。

考察

1. 似たようなエンディングが多すぎる
  • バッドED⇒全36個のうち、首チョンパEDが5個。「魍魎に囲まれて終わり」というパターンが5個。「魍魎に海に引きずり込まれて終わり」というパターンが3個。多少のテキストの違いはあれど、パターン内での展開はそれぞれ似たりよったり。
  • ノーマルED⇒全14個のうち、帰還EDが6個も。どれも似たりよったり。
  • 「<<剣>>は沈まず」と「踏み石渡るは誰そ彼」は、場所が違うだけで、オチへの展開はまるで同じ。テキストもほぼ同じ。

このような状態で「エンディングは実に50種類以上!」(パッケージ裏より)と誇らしげに書かれましても。色違いのモンスターを大量に作って「モンスターは実に200種類!」などと謳うRPGはまだ可愛いものですが(実害ないし)、ADVにおいて似たりよったりのED大量生産というのはプレイヤーの無駄な労力を増やすだけ。できれば避けてほしかったです。

2. ノーマルとバッドの区別が謎

「眠り姫」「あなたの形の心の隙間」「<<剣>>憑き」「九郎、狂う」など、どう見てもバッドEDとしか思えないものがノーマルED扱いされているところに違和感が。ルートのヒロインが死んだり狂ったり二度と目をさまさなくなったり、こともあろうに気のふれた主人公に切り殺されたりするEDがなんでノーマル?

ひょっとしたら、「主人公が死ぬものだけがバッドED」という線引きなのかもしれませんが、個人的にはなんだか納得いかないものがありました。

3. 前作『アカイイト』のような名ノーマル/バッドEDがない

前作『アカイイト』では、「満開の花」「鬼切りの鬼」「赤い維斗」など、切なさや悲しみを通してキャラ間の絆を描き出す名ノーマル/バッドEDが多かったと思います。事実、お気に入りのノーマル/バッドEDを、「自分にとってはこれがトゥルーED」とまで言う人も少なくないぐらいで。

ところが、『アオイシロ』のノーマル/バッドEDにおいては、悲劇はただの悲劇、死はただの死であり、それを通じてキャラとキャラとの間にあるものが描き出されることはほとんどありません。「眠り姫」では百子の、「あなたの形の心の隙間」では梢子の悲しみがそれぞれ描かれますが、これらは「残されたものの一方的な悲しみ」であって、絆と呼ぶにはちょっと違います。また、「ふたりを繋ぐ一振りの刃」における心中も、カヤの独断による行為だという時点で、「赤い維斗」のそれとは質を異にします。

要するに、『アオイシロ』のノーマル/バッドEDは、女のコ同士の織りなす物語の一環というより、単なる「トゥルーEDにたどりつけなかった『ハズレ』」という意味合いが強いと思うんですよ。EDの質より数に重きをおいた結果なのかもしれませんが、前作をプレイした人にとっては非常に物足りないところだと思います。

4. 矛盾いろいろ
  • 「満ち行く潮」では、踏み石の途中で潮が満ちただけで梢子はあっさり海の藻屑に。でも別ルートでは、海に飲まれては「気がつくとなぜか無事浜辺に」というパターンがくどいほど繰り返されてますよね。この差はいったい何?
  • 「海淵に住まう夷の王」「一切の希望を捨てよ」では、門が開くことがこの世の終わりであるかのような絶望的描写がなされ、事実、門が開いた時点でバッドエンドとなります。が、グランドルートでは門が開いても物語は終わらず、皆さん元気に門の向こう側に行ってラスボス戦を展開。この差はいったい何?

いや、要するにフラグの違いなんだろうなー、ということはわかるんですよ。たとえば門が開いた瞬間物語が終わるかどうかは、梢子の腕に<<剣>>が一体化しているか否かで変化するんだろうな、とか。でも、「このルートではこれは全然怖くない」っていうのを濫用されてしまうと、他のシークエンスでのハラハラ感が全て台無しになってしまうと思うんですよね。現に、グランドエンドを見たときは、「海流が危険だからと思って、踏み石を渡る梢子とナミの姿にハラハラしつつ『がんばれ、落ちるな』とか心の中で応援してた自分がバカみたい」と思いましたよあたしは。

まとめ

結局、「エンディングは実に50種類以上!」「何度でも楽しめるストーリー」(共にパッケージ裏より)と謳わんがためにあちこち無理をしすぎたのが『アオイシロ』の最大の誤りだったのではないかと。もう少しコンパクトな設計であれば、ここまで内容希薄で似たりよったりのEDが乱発されたり、演出があちこちで矛盾したりするという事態は避けられたかもしれませんね。かえすがえすもそこが残念です。