石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『晴れのちシンデレラ(1)』(宮成楽、竹書房)感想

晴れのちシンデレラ 1 (バンブー・コミックス MOMO SELECTION)

晴れのちシンデレラ 1 (バンブー・コミックス MOMO SELECTION)

貧乏性お嬢様の爽快ギャグ4コマ(百合なサブキャラあり)

極貧生活から転じてお金持ちになったものの、抜け切らない貧乏性に苦悩するお嬢様「晴(ハル)」の物語。面白かったです。突き抜けた貧乏ネタが嫌味にならず、時に「あるある」と共感を誘いさえするところがいいし、だれも悪役にしないキャラ配置もナイス。百合っぽいサブキャラを複数登場させつつも、女子校特有の「男の代用品として女にのぼせ上がる」みたいな現象を笑う視点がきちんとあるところも楽しかったです。

貧乏ネタの巧みさについて

「遠足でキノコを素通りできないと苦悩する」「どうしても新聞配達の時間に目が覚める」「かつて商品の米俵目当てに子供相撲大会優勝(そして今も怪力)」などなど、晴の貧乏ネタの数々が面白すぎます。ここで非常にユニークなのは、極端な極貧ネタ&怪力ネタに混じって、

  • 子供の頃かき氷のブルーハワイが何だか知らなかったので今でも憧れ
  • 「きな粉」という単語だけで嬉しくて笑ってしまう
  • クリスマスツリーの雪が綿菓子に見えて食べたくなる

など、誰しもどこか身に覚えのあるような「ちょっとした貧乏」のエピソードが巧みに織り込まれていること。作者さんの観察眼のなせる技だと思いますが、これによって晴は、「単なるマンガチックな極貧キャラ」ではなく、「どこか読者とつながった、共感できるキャラ」になっていると思います。

悪い人はひとりもいません

晴やその弟(この子がまたけなげでいい味出してます)をライバル視するキャラなんていうのも出てくるのですが、基本的にみんないい人なんですよね。誰も悪者にすることなくすっきり笑わせるテクニックに脱帽です。

百合なキャラはいるけれど

晴の通う学校は筋金入りのお嬢様学校。下級生の琴ちゃんには「お姉様」と慕われ、同級生の三条さんにはもっと屈折した愛憎(というか明らかに愛なのに、三条さんは自覚してない模様)を注がれている晴なのですが、そこでぜんぜんテンプレ女子校百合をなぞらないところがよかったです。

晴が好かれるのは単に強くてカッコ良くて優しいから(そして見かけも美人だから)ですし、p. 32を見てもわかる通り、そもそも「女子校だから」という理由で同性にのぼせ上がることを疑問視する視点がある漫画なんですよ、これ。いわゆる「禁断の園」的な、つまり抑圧された性欲の捌け口として女同士でキャッキャウフフする作品がお好きな方には向かないかもですが、その人がただその人であるという理由で好かれ愛される話がツボな人にはとても合うんじゃないかと思います。

まとめ

パワフルなのに共感しやすい貧乏ネタがとても楽しいし、百合部分にも変な「禁断」臭がなくてするする読めました。何よりキャラがみんないい奴すぎて、たまらんです。開運グッズ集めがやめられない晴のお母さんを、愛知県で毎年開催されている「招き猫まつり」(常滑と瀬戸で各1回ずつあります)に連れて行ってあげたい、ぜひ。百合メインの作品ではまったくないものの、爽やかな読後感のギャグ4コマとしてすごくおすすめです。