
- 作者: 東雲水生
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2010/10/18
- メディア: コミック
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テンプレを打破するかと思いきや、テンプレにすらなり得ていない女子校百合漫画
女子校が舞台の百合漫画。「一流お嬢様校」「こども理事長」「生徒会がどうしたこうした」などのテンプレ設定羅列の後、目新しい方向に向かうかのように見えて、実はテンプレにすらなり得ずに終わってしまうという怪作。キャラは性格・顔ともに見分けがつきがたく、ラブ方面も弱く、説明台詞も多すぎて、今ひとつ何がしたいのかよくわからない作品でした。カバー下のあとがき漫画によると本来はもっと長い話だったらしく、それを無理矢理縮めたためによけいにわかりにくくなっている部分もあるようです。
テンプレ打破してくれるかと思ったのに……
第1話序盤は、
- 「政財界のお嬢様が通う一流の私立校」
- 一般生徒にモテモテ(ファンクラブまである)な生徒会役員たち
- こども理事長
- 縦ロールお嬢様
等々、いっそ悪趣味なほど凡庸です。しかしながら、第1話後半で生徒会書記・伊織からの爆弾発言があり、ひょっとしたら「百合における陳腐の佃煮」みたいな路線をひっくり返す意欲作なのかと一瞬期待したんです。
しかし、物語の行く末はきわめて尻すぼみ。伊織の主張は結局単なる私怨によるものだし、オチも「柳の下のどじょう」みたいなお嬢様女子校百合ワールドに到達して終わりだしで、すっきりしませんでした。これならいっそ最初から「時代錯誤」で「閉ざされた」女子校百合をひたすら追求した方が、まだまとまりがついたのでは。
キャラとかラブとか説明台詞とか
キャラクタの顔立ちにあまり差がない上に、それまでモブっぽい扱いだったキャラが突然ドアップになったりするため、本気で見分けがつかず困りました。具体的にはp. 92の夏芽さんとかですけど。ラブ方面については、複数カプのいちゃいちゃこそあれ、最後のキスシーン以外はどれもヘテロ同士のなれ合いの範疇。あとがき漫画で紹介されていた未掲載エピソードの数々が実現されていればよかったのにと思います。また説明台詞については、最終話で伊織が丸々3ページ喋りっぱなしという展開に口あんぐりでした。
その他
伊織の私怨部分でよくわからないことがひとつ。時代性から考えて、伊織の祖母は男性と結婚して子をなした可能性が高いと思うんですが、それは「恋人への裏切り」じゃないの?
まとめ
キャラ造形にもストーリーの流れにも物足りなさを感じる作品でした。本来の長さで製作されていれば、あるいはもっと違った印象を持てたのかもしれません。絵柄がよほどツボな方以外には、おすすめしません。