石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『この恋は×××』(山田可南、ぶんか社)感想

この恋は××× (ぶんか社コミックス S*girl Selection)

この恋は××× (ぶんか社コミックス S*girl Selection)

「ノンケ女子の同性間セックス描写」が秀逸な作品集

女性同士の話が計6編、男女話(姉弟近親)が1編収録された作品集。非常にユニークなのは、同性とセックスする女性たちが全部レズビアンなわけではなく、「ヘテロ(または、ほぼヘテロ)だけど同性とのセックスを楽しむ」というシチュエーションが巧みに描き出されていること。しかもそこでいちいち同性愛が見下されたりはしていないこと。女と女の爽快なバディ物として読める「この恋は×××」シリーズから心にひっかき傷を残す「花と乙女」まで、どれもそれぞれに面白かったです。

「この恋は×××」シリーズ(全4話)について

ろくでもない男ばかりにひっかかる「奈々」と「ひとみ」が偶然知り合い、プロレス好き・筋トレ好きという共通点から意気投合。ダメ男たちをプロレス技でやっつけたり、仲良く一緒に飲んだりするうちに、気がつけばその場の勢いでつい体を重ねていた、というコミカルな物語です。

すごく驚いたのは、ふたりともほぼ100パーセントヘテロでありながら(それはセックス中にも結末にも示唆されます)、同性との情事に変な色眼鏡は持っていず、いちいち罪悪感だの後悔だのといったホモフォビックな演出がなされていないこと。むしろ行為を楽しんで、事後にもハッピーな友達関係を続けていること。PCレズゲー『ラストソング』あたりとはえらい違いで、安心して読めました。

女性同士のこういう関係って現実にも存在するのに、なかなかフィクションでは描かれないと思うんです。それを鮮やかにやってのけたところがユニークで、とてもよかったです。だめんずうぉーかーを地でいくふたりのけなげさや可愛らしさ、そしておかしさも光ってました。

「音」「花と乙女」について

ノンケの「華」と、華に片想いするレズビアン「みっちゃん」のふたりの女子高生の関係を描く連作です。「音」でリリカルなプラトニック恋愛を描いたかと思いきや、「花と乙女」では急転直下、みっちゃんが彼氏とではイケない華の性欲処理係にされているという展開に驚愕しました。でも、それはそれでまた面白いんだ。最後のページのみっちゃんの述懐がやるせなくてほろ苦くて、いかにもありそうなところがいいんですよ。

ただし

上記2つのシリーズで、セクシュアリティの線引きが終始一貫して「マンコが舐めれるかどうか」なところはちょっと説得力に欠けるかも。レズビアンだってクンニリングスするのは苦手って人はいるはずだし、そもそもバリネコやネコマグロなる人種も存在しますしね。

その他

唯一の男女話「恋に従う」は姉弟の近親もの。「禁断」色は薄く、ハッピーエンディングを迎えます。

まとめ

女性同士の性愛をこれまでにない形で軽妙に描いた作品集だと思います。よくある「同性同士の大恋愛→セックス」パターンでも、「ノンケ同士で同性愛を軽蔑しつつ快楽だけ追求」パターンでもなく、そのへんにフツーにありそうな「ふと気づいたら女同士でやってました」パターンを扱っているところがとても斬新でした。姉弟ものも合わせて、必要以上に「禁断」「背徳」臭が漂っていないところもよかった。セクシュアリティの線引きとして「クンニリングスできるかどうか」が複数回持ち出されているところだけは疑問に思わないでもないですが、あとは非常に楽しく読めました。