石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『楽園Le Paradis 第2号』(白泉社)感想

楽園 Le Paradis 第2号

楽園 Le Paradis 第2号

  • 作者: シギサワカヤ,中村明日美子,二宮ひかる,黒咲練導,沙村広明
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2010/02/26
  • メディア: コミック
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今回も面白かったです。

オール読み切り&描き下ろしの恋愛系コミック第2号です。今回は全20編のうち6編が百合。第1号とほぼ同じ比率ですね。それ以外の収録作はヘテロものやガールズトークものが主体で、男×男のストーリーは今回は無し。百合作品もそれ以外も、第1号と変わらぬ面白さでした。

女性同士のお話について

以下、感想。

1. 「コレクターズ」「パルファン」(西UKO)

両方とも、大人の女性同士のカップルを主人公とするお話です。相変わらずリアル感満点で、どちらの話も「わかるわかる」とニヤニヤしながら読みました。しかし、香りネタはともかく「コレクターズ」の方の、

自分の服脱がすのってちょっと変な感じ

っていう感覚(p. 56)は、よく考えたら男女恋愛だと味わえないのね(男に女装させない限り)? わー。レズビアンでよかった。

2. 「想いの欠片」(竹宮ジン)

第1号と同じく、苦くてひりひりする大人の恋(いや片方中学生なんですが)の断片を鮮やかに切り取っていて、面白かったです。あるよね、こういうこと。あのカフェの美人マスターさんがまた登場しているのも嬉しいところ。

3. 「すきなひと」(日坂水柯)

夜な夜な姉のおっぱいに吸い付いている妹の姿が可愛いやらエロティックやら。でも、それでいて、ありがちな姉妹百合とはまたちょっと違うんですよこの作品。その変化球っぷりが楽しかったです。

4. 「未明のGirl」(売野機子)

女のコふたりの、深夜から明け方にかけてのファミレスでの会話劇。ふたりのダイアローグを舞台劇風に真横から見せ続けるという手法が面白かったです。たわいないガールズトークが、構図が変わってモノローグに突入したとたんにまったく別の意味を持って響いてくるところもよかった。

5. 「ろみちゃんの恋、かな?」(武田春人)

女子高生が主人公の微百合漫画。百合というより友情ものととらえる人もいるかもですが、そのへんは好きずきで。キャラたちの会話がほんとにそのへんの女子高生みたいで、とても楽しく読みました。これは『楽園Le Paradis』全体に言えることですが、女性キャラにキモヲタ妄想臭がないというか、ごくごく身近で人間臭い魅力があるところがすごくいいんです。うまいのか下手なのかよくわからない絵柄も、とても好き。

その他の作品について

特に印象に残った作品はこのへん。

1. 「オンリーワン」(二宮ひかる)

いったん予定調和チックな展開を見せておいて「キャラクタの想像でした」と梯子を外してみせるという、『シュガーはお年頃』でも多用された手法が楽しかったです。相変わらず強烈なストーリーもよかったし、最後のページの男キャラの表情も面白いと思います。

2. 「GAME OVER」(水谷フーカ)

百合もうまいけど、ヘテロものもうまい描き手さんだなあ! ゲームを仕掛けて優越感を味わう美女、という設定は同作者さんの「オオカミの憂鬱」(芳文社『つぼみVOL.2』収録)を思わせますが、後半の料理の仕方がまったく違っていて、楽しめました。特にラスト2ページの会話と表情は必見。たまらん。

3. 「ひたひた」(鶴田謙二)

猫を入れた籠を頭にのせ、ひたすら線路を歩き続ける少女のお話。SFともファンタジーとも寓話ともつかぬ独特のタッチが魅力的です。

まとめ

相変わらず百合ものもそれ以外もとても面白い、充実の1冊でした。男性同士の話がなくなったのは、やっぱ需要の関係(というか、男×男が読みたい人はむしろBL雑誌に行くとか?)なのでしょうか。とりあえず1号から通して読んで思ったのは、この雑誌では百合ものが「異性愛からの逃避先」にされていないなあということ。「男は(男女は)キタナイが百合はピュアラブ☆」みたいに、いちいち異性愛(への思い込みやら気疲れやら)を下敷きにして女性同士の関係をあげつらう姿勢が皆無なんですよね。作品自体もそうだし、柱やアオリの言葉の選び方もそう。そこがとても嬉しかったです。

余談ですが、2010年6月末発売の第3号には林家志弦さんも登場するそうですよ。予告カットを見る限り、変身ヒロイン百合か何かかな? 今からとても楽しみです。