2012年にアフガニスタンで戦死した米国軍人ドナ・R・ジョンソン(Donna R. Johnson)さんの同性配偶者トレイシー・ダイス・ジョンソン(Tracy Dice Johnson)さんが、復員軍人省がついにトレイシーさんに異性婚の配偶者と同等の死亡給付金を支給すると決定したことを発表しました。
詳細は以下。
Wife of female soldier killed in Afghanistan to receive death benefits | Army Times | armytimes.com
ドナとトレイシーという名前で既にピンと来た方もいらっしゃるかも。そう、以前日記のこちらのエントリで取り上げたカップルです。
なぜ今同性婚訴訟なのか(2):ドナとトレイシーの物語 - みやきち日記
上記エントリからちょっと引用します。
トレイシー・ダイス・ジョンソンさんは、米国陸軍軍曹のドナ・R・ジョンソンさんと結婚してノースカロライナに住んでいました。しかし、連邦法である「結婚防衛法」(婚姻防衛法)は同性婚を認めていないため、軍がトレイシーさんをドナさんの配偶者として扱うことはできません。
で、どうなったか。
ドナさんはアフガニスタンで自爆テロにまきこまれて亡くなりました。29歳でした。トレイシーさんは「配偶者ではない」ので、訃報すら届きませんでした。ドナさんの姉妹から知らされて、ようやくパートナーの死を知ったそうです。なお、ドナさんと同時に亡くなった軍人の配偶者には、軍から直接連絡が行っています。異性同士の既婚者なら支給されるはずの、棺にかける星条旗も、トレイシーさんには届きませんでした。
これだけじゃないんですよ。戦没兵の同性パートナーには、遺族弔慰金が支給されません。月々の遺族給付も与えられません。米軍の住居に住む資格も認められません。愛する人と同じ軍人墓地に眠る資格も与えられません。
ドナさんのお母さんは、トレイシーさんは娘の配偶者だから、軍葬のとき棺に付き添わせてやってほしいと軍にかけあわねばなりませんでした。ちなみに棺に付き添う際には、ドナさんが戦死時に身につけていた結婚指輪と聖ミカエルのメダリオンを、軍の死傷者支援担当官に渡す必要がありました。トレイシーさんは葬儀の前夜、指輪もメダリオンももう2度と見ることができないのではないかと思い、ベッドに持ち込んで一緒に寝たそうです。結局それらは、軍からドナさんのお母さんに渡され、ドナさんのお母さんがすぐにトレイシーさんに届けてくれたのですが。
軍隊が悪いんじゃないんですよ。トレイシーさんは、軍は「できる限りのことをしてくれた」と言っています。それでも法律上、できることには限界があるんです。
この後2013年に連邦最高裁が結婚防衛法を違憲と判断。復員軍人省はそれでも同性婚が認められていない州の同性カップルの権利は認めていなかったのですが、それがとうとうくつがえったんです。
2014年5月17日に発表されたところによれば、トレイシーさんの権利は結婚防衛法が違憲とされた2013年ではなく、2012年のドナさんの戦死時点まで遡って認められるとのこと。2014年現在、米国の軍人遺族手当は月々1233ドル23セント(約12万5千円)ですが、これまでの分の手当はこの額で計算して支払われるんだそうです。
「復員軍人省に敬意を表します」とジョンソンは言った。「延々と続く長い道のりでしたが、結局は心が勝利をおさめました」
“My hat’s off to the VA,” Johnson said. “It was a long, drawn-out process, but at the end of the day, hearts and minds prevailed.”
長かったよねえ、2年間。トレイシーさんのためにも、他の軍人家族のためにもほんとによかったと思います。