石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

スイスで結婚の平等始まる

スイスで2022年7月1日、同性婚が可能に。同国で初めて同性カップルたちが結婚しました。

詳細は以下。

orgullolgbtcolombia.blogspot.com

写真はこちら。

上のツイートの写真左(もしくは1枚目)は、Alois CarnierさんとPeter Leuさんという同性カップル。右(もしくは2枚目)は、Annett BabinskyさんとLaura Suarezさん。元記事ではこのほか、LaureさんとAlineさんという、この日に結婚した女性同士のカップル(写真や姓は非公開)の談話も紹介されていて興味深いです。LaureさんとAlineさんは4歳の息子さんを一緒に育てているカップルで、この7月1日がちょうど19回目のシビルユニオン記念日だったとのこと。結婚の平等の実現について、Laureさんは以下のように話しています。

「確かにスイスはちょっと遅かったですね。結局のところ、早すぎるってことはないんですが。今、その時が来たんです」

"Es cierto que Suiza ha sido un poco lenta. Después de todo, no es un momento demasiado pronto. Ahora es el momento"

なおスイスの結婚の平等は、結局2021年の国民投票までもつれこんで、そこで64.1%の賛成を得て実現の運びとなったのだそうです。これってアイルランドやオーストラリアとよく似たパターンで、そしてアイルランドやオーストラリアのときも書いたと思うんだけど、本来はマイノリティの権利をマジョリティによる多数決で決めるのはあってはならないことのはず。ほら、カリフォルニア州の同性婚がProp 8でひっくり返されたとき、州最高裁判事(当時)のCarlos Morenoが、同性婚の権利を多数決で決めるのは「すべての不人気な(disfavored)少数派たちの憲法上の権利を危険にさらす」ことであり、「少数派を多数派の意向から守るための砦」であるはずの憲法の機能を弱体化させることだと言ってたじゃないすか。憲法で保障されている権利というのは、「『多数派がいいって言ったから』あなたたちにも認めてあげます」という性質のものじゃなくて、「『多数派が何を言おうと』、どんなにdisfavoredな人にも等しく認められます」というたぐいのもののはず。その点、スイスがたどったプロセスはあんまり褒められたものではないかと。

ただ、そうは言っても、これで結果としてスイスの同性カップルが養子縁組、配偶者の市民権取得、年金、保険などに関して異性カップルと同じ法的立場に立てるようになったこと自体は良かったと思いますけど。あと、いくら多数派が賛成したところで、宗教保守が権力の中枢を牛耳っていれば宗教保守好みの政策が強行されるだけ(米国のローvsウェイド判決撤回*1やら日本の夫婦同姓強要*2やらが好例)だという現実を考えると、せめてスイスはそうならなくてよかったとも言えますね。結婚された皆さんおめでとうございます、どうぞお幸せに。

*1:米国人の過半数は、世論調査で人工妊娠中絶は法的に認められるべきだと回答してます。参考:61% of Americans say abortion should be legal | Pew Research Center

*2:参考:<選択的夫婦別姓> 最新の調査結果は?|読むらじる。|NHKラジオ らじる★らじる