石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

トランスジェンダーの人に言うべきでない5つのこと(と、言うべき3つのこと)

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米Amazonのトランスジェンダー自伝部門1位のベストセラー『She's Not There』の著者ジェニファー・フィニー・ボイラン(Jennifer Finney Boylan)氏による、「トランスジェンダーの人に言うべきでない5つのこと(と、言うべき3つのこと)」という記事が面白いです。

詳細は以下。

5 Things Not to Say to a Transgender Person (and 3 Things You Should) | Jennifer Finney Boylan

まず、「言うべきでない5つのこと」を要約して訳すと、こんなです。


1. 「ねえ、手術はもうしたの?」
  • これって、誰かがやってきていきなりペニスや膣の話を始めるようなもの。。
  • 陰部(private parts)とはプライベート(private)なもの。そんなことを聞くとか、ありえない。
2. 「ル・ポールは好き? 『ロッキー・ホラー・ショー』はどう?」
  • ドラァグ文化とトランスの現実は違います。ドラァグはパフォーマンスで、トランスは実生活。
  • フランクン・フルターは「トランスセクシュアルで、トランシルヴァニアのトランスヴェスタイト出身」だと歌ってますが、顔を黒く塗ったアル・ジョルソン(訳注:黒塗りの顔で黒人を演じたユダヤ系米国人歌手)がサーグッド・マーシャル(訳注:史上初のアフリカ系アメリカ人の最高裁判所判事)でないのと同様、彼はトランス女性ではありません。
3. 「きっとジュディス・バトラーが好きなんでしょうね!」
  • バトラーの革新的研究を愛するトランスジェンダーはたくさんいるけれど、わたしたちの生活はお利口な学術理論ではなく、暴力と戦いながら尊厳とリスペクトを求める戦いの連続なんです。
  • トランスと話すなら、わたしたちが学問上の抽象概念ではなく、リアルな個人だと思ってください。
4. 「オーガズムは得られるの?」
  • たいていのトランスは手術後パーフェクトなオーガズムが得られます。だから答えは「イエス」だけど、知らない人といきなり話題にしたいことではありません。
5. 「子供がかわいそう」
  • 批判的じゃないふりをしながら批判する古典的なやり方ですね。
  • 人の家庭を見下す人こそが、子供たちに害をなすんです。

元記事のコメント欄には、「自分はトランスジェンダーだがこの5つとも言われたことはない」という声もあれば、「しょっちゅう言われた」という人もいるみたい。どちらも真実なのだろうと思います。要は、「相手のプライバシーや尊厳を軽視する人」や、「知識がないまま会話の接点を作ろうとしてステレオタイプ化に走る人」が身近にいればいるほど、こういうことを言われる機会が増えるってことなのではないかと。

個人的には、上記5例はレズビアンに往々にして投げかけられる言葉にも通じるものがある気がします。ル・ポールの話はされなくても、初対面の人から「ぼくの大好きなレズAVの女優さんの話」を延々語られたことならありますよ、あたし。また、バトラーではなくフーコーについて、なぜか「当然好意的に読んでいるだろう」という前提のもとに語られたことも。「ペニスなしでオーガズムは得られるのか」とか、「(同性カップルの)子供がかわいそう」とかいう発言だって、見聞きしたのは1度や2度ではありません。

こうした、「話者に悪気はないつもりでも実は失礼な発言」って、実はジェンダーやセクシュアリティの話題以外でもいくらでも起こりうることですよね。共通して言えるのは、勢力のある集団に属している人が、勢力のない(奪われている)集団に属している人と接するとき、うんざりするほどの頻度でこういうことが起きるってこと。ここで偉そうなことを言ってるあたしだって、絶対に日常会話のどっかでこういう失礼発言をやらかしてるに違いないと思います。ええ、それはもう確実に。本人が認識できていないだけで。

じゃあどうすればいいんだという話になりますが、それについてはボイラン氏の挙げている「トランスジェンダーの人々に対して言うべき3つのこと」が大いに勉強になるかと。その3つとは、こんなです。

  1. 「元気ですか?」("How are you?")
  2. 「ジェンダーのことについて話してもいい?」
  3. 「わたしが読んだ方がいいような、おすすめの本はある?」

これって、「ジェンダー」の部分を他の単語に入れ替えれば、立場の違うどんな人との会話にも応用が利くのでは。いや日本語の会話では「元気ですか」ってあんまり言わないけど、これって要するに「挨拶で敬意を示すことが大事」って話なんで、ちゃんと敬語を使って礼儀正しく挨拶できればそれでいいんだと思います。他のふたつも、相手の意向を確認しながら丁寧に話を進めるとか、自分に知識がないのならまずおすすめ本を聞いてみてそれを読むとか、何にでも当てはまる超基本的なことですよね。心に刻んでおかなくちゃ。

最後に、ボイラン氏によるトランスジェンダー関連のおすすめ本リストを載せておきます。あたし、2冊(『Gender Outlaw』と『Redefining Realness』)しか読んでないわ。まずこういうのをちゃんと読むところからだよなー。

  • 『She's Not There』(Jennifer Finney Boylan、 Shebooks)
  • 『Stuck in the Middle With You』(Jennifer Finney Boylan、 Shebooks)
  • 『I'll Give You Something to Cry About』(Jennifer Finney Boylan、 Shebooks)
  • 『Gender Outlaw』(Kate Bornstein、Routledge)(邦訳『隠されたジェンダー』、新水社)
  • 『Redefining Realness』(Janet Mock、Atria Books)
  • 『Trans Bodies/Trans Selves』(Laura Erickson-Schroth (Ed.)、Oxford University Press)