石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

英国の両性愛者ティーン、ホモフォビックなおばに痛烈な切り返しを見せる

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英国在住の10代両性愛者女性「チャーリー」(charlie)さんが、彼女を「オカマ」呼ばわりしてひどいことを言ったおばに対して送ったテキストメッセージのスクリーンショットをTwitterで公開し、話題を呼んでいます。

詳細は以下。

You have to read what this teen texted to her aunt who called her a 'faggot' - Gay Star News

ことの発端は、このおばさんとの直接のけんかなのだそうです。

(訳:おばさんとけんかになって、おばさんから『少なくともあたしゃ、あんたの母さんみたいにオカマの子供のことで悩む必要はないよ』って言われた)

これだけならまだしも、この後おばさんが彼女に送ってきたというテキストメッセージの内容がひどくてひどくて。具体的には、以下のツイートをごらんください。以下で引用したチャーリーさんのツイートは、その後削除されたようです。削除前のツイートと、ツイートに添えられていた画像は、Gay Star Newsで見ることができます。

おばさんからのメッセージを要約すると、こんな感じ。

  1. 「さっきのことであんたが怒っていないといいんだけど」と一応しおらしく始めておいて、
  2. 「悪い意味でオカマって言ったんじゃないの、あなたたちゲイの人は何でも大騒ぎするって言いたかっただけ」とわざわざ偏見を開陳し、
  3. 「若いんだからそのうち男に出会って変わることができるわ、あんた昔はもっと賢かったじゃない」と見当違いな自説を唱え、
  4. 「あたしのアドバイスを聞く気がないのなら、インディーの誕生日パーティーには来ないで。あんたに台無しにされたくないの」という脅しで終わる

インディーというのはたぶん、このおばさんの娘か何かでしょう。

さて、これに対してチャーリーさんが送った返信がこちら。

訳:

こんにちは、マリーおばさん。気にしないで! おばさんがワインを2、3本飲んだ酔っぱらいみたいな人だってことは知ってるし。インディーのパーティーには行けないと思うわ。その日はレズビアンの乱交大パーティーの予定が入ってて、わたしとオカマの友達は、何ヵ月も前からそのパーティーの計画を立ててたんだから。ところでおばさんの離婚の進み具合はどう? リーおじさんが新しい彼女と一緒にいるところを見たけど、あの人おばさんより20歳若いよね? じゃあねー!

この後彼女のスマホは母親・父親・いとこからのメッセージで阿鼻叫喚になったら模様。おそらくマリーおばさんが「チャーリーにひどいことを言われた」とかなんとか騒いだのでしょう。しかし、チャーリーさんが直接お父さんに電話で経緯を説明すると、お父さんは怒らなかったばかりか、チャーリーさんに50ポンドくれたそうです。なんていいパパだ。

ちなみにチャーリーさん、おばさんとの最初の喧嘩のあと、わざわざ電話で「悪いけど誰もがあなたのライフスタイルに賛成するわけじゃない」と言ってきたいとこに対しても、「ライフスタイル? わたしの生活、異性愛者と変わらないけど??? ゲイだからってライフスタイルが別物だったりしませんけど???」、「じゃあゲイ専用のスーパーマーケットで買ったゲイ用歯ブラシでゲイな歯を磨くから、とにかく放っといてよ」と軽快な切り返しを見せています。頭がいい上に、根本的な自己受容がしっかりしているから、こういう返しができるんだろうなあ。

話はだいぶ飛ぶんですが、先日ブログで紹介した『同性愛は「病気」なの? 僕たちを振り分けた世界の「同性愛診断法」クロニクル 』(牧村朝子、星海社新書)を読んで何に驚いたって、著者あとがきの「私自身、いちばん悩んでいた思春期は、検索エンジンに『同性愛』って入力することにすらひどい罪悪感があり」、「自分は不適切な存在なんだ……」と感じていたという記述です。太古の昔に思春期を経験したあたしの世代ならともかく、1987年生まれの牧村さんでさえこうだったのかと衝撃を受けました。大人がなんとかしなきゃいかんでしょう、これは。昔と同じ苦労を若い世代にそのままなぞらせてるようじゃ、なんのために人類の進歩ってものがあるのよ。

そうは言ってもこの先も「マリーおばさん」的な人がゼロになることはないでしょうが、なればこそ、子供がホモフォビックな意見や態度にぶつかったとき、チャーリーさんのように「ファック・オフ*1、自分の頭の蠅でも追ってな!(大意)」と言えるだけの自己受容と勇気を持てるよう、大人が精一杯環境を整え、情報を伝え、支援せねばならないと思います。とりあえず自分がこのブログでささやかに「海の向こうでこうやって言い返して喝采を浴びてるティーンがいるよ」と紹介するのも、ひとつにはそのためだったりするんでした。「たとえ自分の身の回りの人が全員『マリーおばさん』状態でも、ちがう場所にはそんなじゃない人も一杯いるんだから、屈従する必要なんかないんだぜ若者よ」ということが1ミリでも伝えられていたら嬉しいです。

*1:ホントに"fuck"って単語を使っておばさんに言い返したらしいですよ、チャーリーさん。やるなあ。cf. https://twitter.com/maggiegIenn/status/716325223369457668