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石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャー。

ドラマ『殺人を無罪にする方法』シーズン1感想

LGBTニュース ドラマ ゲイ バイセクシュアル

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あんこがかなり偏ったタイヤキ

ションダ・ライムズ製作の法廷ドラマ。同性愛/両性愛の要素があります。序盤と最終話は超面白いのに、シーズン中盤はキャラの魅力不足が目立ち、あちこち古く、やや退屈。あたかも「あんこが頭と尻尾の部分に集中しているタイヤキ」のようなシリーズでした。

パイロット(#1)と最終話(#15)が超gripping

『殺人を無罪にする方法』は、辣腕弁護士アナリーズ・キーティング(ヴィオラ・デイヴィス)と彼女に師事するロースクール生5人がある殺人事件に巻き込まれ、奔走する姿を描くクライム・サスペンス。シーズン第1話と最終話のつかみのパワーはすさまじく、見たら最後続きが知りたくて夜も眠れなくなるほど。実際シーズン1を見終えた今、シーズン2(日本未放映、NetflixやDVDも日本語版はまだ)が見たくて地団駄を踏んでいるところで、その意味では実によくできたドラマだと思います。が、惜しむらくはこのシーズン1、中盤が弱いんですよねえ……。

一部キャラの魅力が今ひとつ

ヴィオラ・デイヴィスが迫力の演技を見せている*1アナリーズに比べ、ロースクール生たちのキャラが弱すぎる気がします。ミカエラ(アジャ・ナオミ・キング)はキャンキャンと泣き言を言ってばかりだし、ウェス(アルフレッド・イーノック)はさしあたって「善良」以外の売りが見当たらないし、アッシャー(マット・マクゴリー)はトンマだし、ローレル(カーラ・ソウザ)は影が薄いし、そもそも全員バカな行動をしすぎだしで、積極的に肩入れしたくなるようなキャラがどうにも見つけられませんでした。

最初の数話はそれでもローラーコースター展開が幸いして粗が目立たないのですが、ある程度話が落ち着いてからは、彼らの退屈さが鼻についてきます。そうそう、アナリーズの教え子のロースクール生にはもうひとり、コナー(ジャック・ファラヒー)というキャラがいるのですが、彼については後段で。

あちこち古すぎ、既視感ありすぎ

先述のコナーはゲイという設定で、第1話から男性との激しいセックスシーンを展開します。第2話あたりまで見た段階で、コナーがこの作品のお色気担当であることは明白。しかしながら、どうにも平板で新味に欠けるんですよ、このキャラ。

ドラマのお色気担当を男にやらせるというのは、映画『ドラゴンタトゥーの女』(2009)がとうの昔にやっています。セックスを武器にして仕事を有利に進めるイケメンゲイという設定も、『クィア・アズ・フォーク』(2000)のブライアンともろ被り。ではコナーにミカエル・ブルムクヴィストやブライアンを超える何かがあるかというと、少なくともシーズン1では何ひとつ見当たりませんでした。あるのは既視感だけ。

それでも彼がたらしこんだ男のひとり、オリヴァーとの恋愛関係が進んで行くにつれて、「これでついに何か目新しい展開が!?」と期待することはしたんですよ。しかしながらこの関係も結局、2000年代どころか80年代の「悲劇のゲイドラマ」路線に着地するのみ。シーズン2に向けての布石だということは一応わかるんだけど、あまりにもオールドファッションすぎない?

そうそう、蛇足ながらもうひとりの主要キャラ、レベッカ(ケイティー・フィンドレー)も、

  • ゴス風メイクに鼻ピアス
  • 知能が高すぎて社会になじめない
  • 実はハッキング能力あり

……という設定が『ドラゴンタトゥーの女』のリスベットと丸被りでした。それでいて、リスベットほどの強烈さは欠片もないところにがっかり。コナーともども、もう少し違った切り口を試してみた方がよかったのでは。

中盤はソープオペラ

シーズン中盤の流れはあたかもチープなソープオペラのようで、投げ出さずに見続けるにはけっこうな忍耐力を要しました。あの「とりあえずセックスと犯罪を散りばめておく」&「とりあえずフラッシュバックで画面をチカチカさせておく」という手法の繰り返しには正直言って食傷ぎみです。それでも話が再び加速し始めるあたりまで頑張ることができたのはひとえに物語のベースとなる大きな「謎」の力によるもので、だから、全体としてはよくできた作品なのだとは思います。でも、できればタイヤキの胴体部分にももう少しあんこが詰まっていて欲しかったです。

まとめ

「何だこれおもしれー!!」(シーズン序盤)→「何よこのやっすいソープオペラ……」(中盤)→「やっぱりおもしれー!!」(終盤)と感想が二転三転するドラマでした。それだけメインプロットのひねりがダイナミックな作品だとも言えます。ゲイ描写の陳腐さや、シーズン半ばの中だるみ感を軽く流せる人なら一見の価値ありと言っていいでしょう。大丈夫、途中の印象はどうあれ、#15を見たとたん「続きはまだか」と叫びたくなりますから。余談ですがこのドラマで女性同士の関係が登場するのはシーズン2からで、シーズン1ではその伏線が軽く張られるのみなので、百合目当ての方はそこだけご注意を。

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*1:日本語吹き替えと英語音声+日本語字幕の両方で見てみたのですが、後者の方がおすすめです。アナリーズの強さと弱さのコントラストは、やはりヴィオラ・デイヴィスの声あってこそ十全に伝わる気がします。