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石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

米ニュースサイト、ゲイ用出会いアプリでリオ五輪選手のプライバシーを侵害

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米国のニュースサイト「デイリー・ビースト」(The Daily Beast)の記者がリオデジャネイロ五輪の選手村でゲイ用出会いアプリを悪用して選手のプライバシーを侵害し、アウティングに近い記事を発表したとして糾弾されています。

詳細は以下。

Daily Beast's Grindr-Baiting Is the Worst Invasion of Privacy | Advocate.com

この記者、Nico Hines氏は異性愛者の既婚男性。彼は「出会いとセックス、セックス、セックスの温床」たる選手村の実態を探るためと称してゲイ向けの出会いアプリを使い、そのアプリでひっかけてチャットした男性選手たちのことを詳しく記事に書いたのだそうです。しかも、わざわざ相手の国籍や身体的特徴まで明かして、誰のことだか特定されかねない形で。なおAttitude Magazineによれば、この記事に書かれた選手のうち少なくともひとりはこれまでカミングアウトしていなかったとのこと。

Slateの Mark Joseph Stern氏はこの記事を「安っぽく、危険で、ひどく倫理にもとる」ものとして激しく批判。Stern氏の意見では、Hines氏は「虚偽を用いて(しばしばクロゼットの)相手を誘惑し、抑圧的な国々に住んでいる選手たちを実質的にアウティングし、しかもそれをあざけるようなどぎつい見下し口調で」やったのだとのこと。また、ソチ五輪が終わってからゲイとしてカミングアウトした米国のフリースタイルスキー選手、ガス・ケンワーシー(Gus Kenworthy)も、この件についてTwitterで以下のように発言しています。

訳:「つまり、要するに@NicoHinesは、彼が罠をかけたと認めているデイリー・ビーストのクソ記事を書くために、たくさんのアスリートをアウティングしたってわけだ」。

なお、デイリー・ビーストでは現在この記事は削除され、代わりに2016年8月11日付の謝罪文が掲載されています。

ひょっとしたらHines氏は気づいてさえいなかったのかもしれませんが、世界で同性愛が違法とされている国はまだ70か国以上あります。同性愛で死刑に処せられる可能性がある国も、少なくとも10か国ISISはゲイとみなした相手を殺し続けていますし、同性愛が合法で同性同士で結婚もできる米国でさえ、つい先日ゲイクラブで49人も射殺されたばかりです。日本でだって、同級生からアウティングされた一橋大ロースクールの大学生が自死しています。差別や攻撃のトリガーとなりうるデリケートな情報を本人の許可なく不特定多数に向けてばらまくということの危険性・暴力性に、氏はもっと自覚的であるべきです。

最後に、トンガのオープンリー・ゲイの水泳選手で、2012年、2016年と五輪に連続出場しているアミニ・フォヌア(Amini Fonua)氏が今回の件について述べたこちらのツイートをどうぞ。

訳:「自分が安全だと思える場所、自分を偽らずにいられる場所が、そんなの全部お笑い種だと思っている異性愛者にぶち壊されるところを想像してみてくれ」。

訳:「トンガではいまだに同性愛は違法だ、自分には世界の前で自分自身でいられるだけの強さがあるが、誰もがそうだというわけではない。そのことを尊重してくれ」。