石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

ユナイテッド航空から児童性虐待者扱いされたゲイ・ファーザーが訴訟へ

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ユナイテッド航空のフライトで5歳の息子の膝に手を置いていたゲイ男性が、同社の搭乗員から「手の場所が子供の性器に近すぎる」ため「危険で有害」であるとして通報され、1時間拘禁されたとして、同社を訴える意向を示しています。

詳細は以下。

Gay dad to sue United Airlines after it said his hand was ‘too close’ to his son’s genitals · PinkNews

事件が起こったのは2017年5月17日のこと。この男性ヘンリー・アマダー=バッテン(Henry Amador-Batten)さん(52)は、夫のジョエル(Joel)さんと5歳の息子のベン(Ben)君と一緒に、ユナイテッド航空の便でプエルトリコから帰国するところでした。フライト中、ヘンリーさんは飛行機を怖がるベン君を安心させようと、眠っているベン君の膝の上に自分の手を置いていたとのこと。ところが、ローリー・ダーラム国際空港に着陸するや、ヘンリーさんは警官の群れに直面するはめに。ヘンリーさんの手が子供の性器に近すぎると考えたユナイテッド航空の搭乗員が、当局に通報していたからです。

ヘンリーさんは結局1時間拘束されたのち、罪に問われることなく解放されました。しかしながらこのカップルは、他の乗客の面前であたかも犯罪者のような扱いをされた上、搭乗員も機長も「まったくもって卑劣で、絶対に許せない」態度だったとして、同社を訴えると表明しています。以下、それぞれジョエルさんとヘンリーさんのことば。

「ただ単に自分たちの見かけがだれかの気にいらないかもしれないからという理由で、フライト中にこんな目に遭わされることを心配しなければならないだなんて、どんな人にもあってはならないことです」

“This is not something that anyone should have to worry about happening to them on a flight just because someone might not like the looks of them.

「このユナイテッド航空の搭乗員は子供を救ったのではなく、ひとつの家族を傷つけたのです」

“This United Flight crew did not save a child, they hurt a family.”

ユナイテッド航空は2017年4月9日、社員の座席を確保するためベトナム系米国人の乗客を強制的に引きずり下ろし、鼻と前歯2本を折るなどの重傷を負わせて問題になったばかり。日本ではあまり報道されなかったようですが、その後、脊椎の病気を持つゲイ男性に対し、移動支援機器の積み込みを拒否(機内持ち込みも預かりも拒否)して彼のハネムーンを台無しにしたりもしています。今回の件について、同社のスポークスパーソンはふたりに直接謝罪済みであると発表しているそうですが、ヘンリーさんによれば謝罪のためにこのカップルのもとを訪れた女性は「ユナイテッド航空は最近『ひどい報道』を経験しているからこの件は公表しないでほしい」と頼んできたとのこと。それは謝罪ではなくただのもみ消しだし、そもそも最近なぜ批判されているのかもわかっていないのでは?

思うのですが、もしヘンリーさんが夫ではなく妻と一緒に飛行機に乗っていて、子供の膝に手を置いていたとしたら、こんな通報はされなかったのでは。「ゲイは同性になら誰にでも欲情するセックスモンスター」とか、「ゲイは子供をつけねらっている」とかいう古典的な偏見(偏見ですよ。少なくとも、既にこれまでの研究・調査の結果から、『男の子を性虐待する成人男性の大部分が異性愛者のアイデンティティを持っている』、『小児性愛者は相手のジェンダーではなく極端な若さに興奮する』、『ゲイによる男児への性虐待は稀で、レズビアンによる女児への性虐待はさらに少ない』などと指摘されているのは確か)が、今回のようなトラブルを生んだ可能性は高いと思います。上記の「謝罪」から言って、今後社として積極的に再発防止に取り組むとは考え難いし、ユナイテッド航空の飛行機には乗らないようにするのが賢明かもね。