石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

LGBTQお断りの小説コンテスト炎上 クィアなエロティカの大喜利状態に

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とあるクリエイティブ・ライティングのオンライン講座が、ショートショートコンテストの応募要項に「LGBTQお断り」と明記。これを批判する人々が同コンテストに送るクィアなエロティカ小説を続々と発表し始め、一種の大喜利状態となっています。

詳細は以下。

Writing competition bans LGBTQ stories, gets exactly the response it deserves

このショートショート(英語では"flash fiction")コンテストを企画したのは、Creative Writing Instituteなる団体。同団体のWebサイトのフォームから1000語以下の短編小説を応募し、入賞すれば特典としてクリエイティブ・ライティング講座を割引価格で受けられるというものなんですが、問題は応募要項の中にこんな記述があったことです。

罵り言葉、神への冒涜、露骨な性的場面、どぎつい暴力、LGBTQは禁止。

No swearing, profanity, explicit sexual scenes, graphic violence, LGBTQ.

これに対しクライム小説家のサラ・ヒラリー(Sarah Hilary)は、「それじゃ、LGBTQは罵り言葉や暴力と同じというわけ? 恥を知りなさい」とツイート。オープンリー・レズビアンの英作家ステラ・ダフィ(Stella Duffy)は、Twitterで怒りを(ちょっと皮肉に)表明し、別のTwitterユーザによる「応募フォームに主催者への質問を入力してそのスクリーンショットを公開しよう」という呼びかけに賛同しています。ロマンス作家のジュリー・コーエン(Julie Cohen)は同団体のCEOにこのルールについて説明するよう求め、サンデー・タイムズ紙 ベストセラーThe Summer of Impossible Thingsの著者ローワン・コールマン(Rowan Coleman)は、「本当によい書き手はすべての人間性を受け入れるものです。本当によい書き手は、視野を広げ、心を開き、世界のなかの全き虹を再現するものです。本当の善人も同じです」と表明しています。

Twitterを見る限り作家以外の人もたくさん抗議しているし、いつの間にやら「このコンテストの応募フォームから送り付けるクィアなショートショートを書き、スクリーンショットを公開する」という一種の大喜利まで始まっていて、そちらも大変おもしろいです。以下、何篇か紹介してみます。

画像内の小説私訳:

ビアトリスは陽気に(ゲイに)ベッドからまろび出た。「バイセクシュアルでいられるのって最高!」と彼女は思った。ピンクと水色と紫色のバイセクシュアル・プライドの旗模様のスリッパを見て微笑み、レズビアンの友人スーはゆうべレズビアンらしくごみ出しをしてくれただろうかと考えた。

画像内の小説私訳:

トニーとデイヴは、姪っ子のたいそうレズビアンな結婚式へと足を踏み入れた。手をつないで、愛情をこめて目と目を見交わしながら。トニーは黒いスーツにトランスジェンダーのプライド・フラッグ模様のタイをつけ、そのタイはかれがトランスジェンダーであることをステキに表明していた。いっぽうデイヴはいつもとおなじくネオンカラーのオレンジ色のシャツを身につけていた。「このシャツは」

続きはこちらのツイートで読めます。式場にはAセクシュアルもパンセクシュアルもいて、最後は花嫁同士がケイティ・ペリーの曲でファーストダンスして終わるの。

さらにすごいのが、ギリシャ神話を下敷きにしてライトなコメディからエロティックな百合展開へと移行し、軽妙なオチに着地するこちらのショート・ショートです。

1枚目の画像の斜字体で書かれている部分は、ペルセウスがメドゥーサと対峙する場面。ペルセウスときたらメドゥーサに見とれて彼女の目の色のことばっかり考えたり、蛇の分を入れてもまだおれの方が背が高いんだぜと思ったり、おれにはどんな女でも好きに選んで客体化してよいのだという「神からたまわった権利」があるんだからとメドゥーサを好色にねめまわしたりしています。あげく、「こいつ絶対にほしがってるぜ……」などと身勝手なことを考え始めたりもしています。

画像2枚目以降はメドゥーサが主人公となり、フォントも内容も激変。ペルセウスはあっさり殺され、メドゥーサは元気にロンドンの地下鉄ベイカールー線に乗って恋人のリリーに会いにいっています。ふたりのちょっとダークな会話とエロティックなキスシーンの後、メドゥーサの蛇についてのギャグがぶちかまされ、ちゃんとレズビアンらしいオチもついて(『彼女たちはレズビアンであって、モンスターじゃないんです』)、物語はハッピリーエバーアフターで収束。蛇も幸せに。何この匠の技。

ちょっと調べたところ、この作品を書かれた方は英国の作家さんで、ロマンス小説やYA小説をものされている方のようです。これが読めただけでも、このショートショートコンテストの意義はあったんじゃないかと思いました。なお、これだけ批判されてもコンテスト主催者は(少なくとも現時点では)ルールを変更していないようなんですが、まあせいぜいがんばってウエストボロ・バプティスト教会御用達の作家候補でも探してればいいんじゃないの。世の中にはもっと面白いものもステキなものもたくさんあって、差別に怒ってくれる人だってこれだけたくさんいるんだぜ。