石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

J.K.ローリングが(また)トランスフォビックなツイート

Who Is J.K. Rowling? (Who Was?) (English Edition)

生理のある人がCovid-19のパンデミックのため衛生の環境が整わない状況に追いやられるリスクについて書かれた記事に対し、英作家J.K.ローリングがトランスフォビックなツイートを披露。批判を受けています。

詳細は以下。

www.towleroad.com

まず、J.K.ローリングがTwitterで言及した記事というのはこちらです。タイトルは「オピニオン:COVID-19後の世界を、生理がある人にとってより平等なものにするということ("Opinion: Creating a more equal post-COVID-19 world for people who menstruate")」。

www.devex.com

上記記事内では、生理のある少女、女性、ジェンダー・ノンバイナリーな人などはパンデミック中でも以前と同じく水や衛生用品、トイレへのアクセス等々を必要としていること、にもかかわらずこれらが得られていない人がたくさんいること、したがって不平等やスティグマの問題に取り組み、衛生システムを改善していくべきであることなどが説明されています。

J.K.ローリングは、どうもこの記事の「生理がある人」という表現がお気に召さなかった模様。以下のツイートで、こんな風に揶揄しています。

訳:

「生理がある人」。そういう人たちを指す単語があったはずだけど。だれか教えて、「ウンベン」だっけ? 「ウィンパン」? 「ウーマッド」?

‘People who menstruate.’ I’m sure there used to be a word for those people. Someone help me out. Wumben? Wimpund? Woomud?

つまりこの人、生理がある人=ウィメン(女性)だとほのめかしたいらしいんですね。それはダメでしょローリングさん。それじゃ、大昔のHIV/AIDS対策で、「男とセックスする男=ゲイ男性」という粗雑な線引きが使われて失敗したのと同じ轍を踏んじゃってるよ。当時、この線引きのもとに「『ゲイ男性』はハイリスク群」という物言いがさかんにされたんだけど、おかげで「女性と結婚し、『自分はヘテロだ』という認識のもと、隠れてハッテンバで男性とセックスしている男性」らが取りこぼされてしまって、感染拡大予防にとっても医学的研究にとってもマイナスでしかなかったじゃないですか。「ゲイというのは突っ込まれる側の女々しい男のことで、俺は突っ込む側だからゲイじゃない、したがってAIDSにはならないからコンドームはいらない」みたいなむちゃくちゃな理屈で危険なセックスを続ける人さえいたじゃないですか。その反省から、90年代あたりから、疫学的研究には「ゲイ」ではなく「MSM(Men having sex with men/Men who have sex with men, つまり『男性とセックスする男性』)」というより正確で現実的なカテゴリーを使うことが提唱されるようになったんじゃないですか。

生理についての衛生対策だって、「その人が女か、そうでないか」よりも、「生理がある人かどうか」を基準にした方が現実的で、取りこぼしが少なくなるはず。だいたい「生理がある人=女性」なんてことにしたら、摂食障害で生理が止まってしまった少女も閉経後の女性も女じゃないってことにされてしまう一方、子宮や卵巣があるトランス男性やノンバイナリーの人には生理にまつわる衛生ケアを提供しなくていいということになってしまいます。一部の人だけミスジェンダリングを甘受しなければ必要なケアにアクセスできないというのはただのいじめだし、それでは元記事で懸念されていたような、ヴァルネラブルな立場に置かれている人々への不平等は是正されないままです。なんでこんなことがわからんのだJ.K.ローリング。……と思ったけど、この人がトランスフォビックな発言をするのは以前からのこと(Towleroad Gay Newsで詳しく説明されてるけど、疲弊するので訳しません)(日本語だと清水晶子さんのこちらの一連のツイートが大変わかりやすいです)だし、ハリポタの中にもちょっと危ういと思うところはあったので、今さら驚きはしません。もう持ってるハリポタ本、全部売っちゃおうかなあ。