- 出版社/メーカー: J.V.D.
- 発売日: 2001/09/07
- メディア: DVD
- この商品を含むブログを見る
笑いも涙もあるレズビアン・ミュージカルコメディ
「『日本語版をつんくが制作監督指揮して、モー娘。や元T&Cボンバーのメンバーが吹き替えに参加!』という路線で売り出された謎のレズビアン・ミュージカル映画」です。「レズビアン版ロッキー・ホラー・ショー」とかいう謎のキャッチコピーがついてます。
結論を先に言うと、イイです、この映画!
ただ単にレヅ万歳なストーリーじゃなくて、ゲイもヘテロもバイセクシュアルも、とにかく誰でもハラショー! な気分になれるところがイイです。むろん、エンディングまでには笑いあり涙ありドキドキハラハラありといろんな仕掛けがあるわけだけど、観終わった後にはスカッとするわ! 観るかどうか迷ってる人は、ぜひ観るべし。
ストーリー
この映画のあらすじは、「米国の片田舎『バムファック村』に住む隠れレズビアン娘エイプリルは、自分の結婚式から逃げ出して自殺しようとした瞬間、鏡の中に吸い込まれ、レズビアンの楽園であるレスボス島(Isle of Lesbos)に到着。エイプリルを取り返そうとする両親や婚約者と、レスボス島のレズビアンたちとの攻防の行方やいかに」というもの。
軽いノリで楽しめるミュージカル・コメディーなんですが、保守的でダサダサなバムファック村の様子といい、レスボス島でいかにもなレズビアンたちに囲まれてハッピーになっていくエイプリルの姿といい、『イッツ・お約束タ~イム!』な感じで楽しいです。
特にバムファック村(直訳すると「役立たずファック村」なのが笑える)の描写が面白かったな。セットもわざとペラペラの安っぽいつくりになってるけど、住民もまた大バカモノに描かれていて、
「ここ(バムファック)ほどいいところはない」
とニッカリ笑って歌いつつも、バプティスト以外の人間や黒人なんかぶち殺せ、ホモなんて牛や馬と同列かそれ以下だ! って本気で信じてる人達なのね。あたしはこれ、大笑いしながら見ましたけど。相当デフォルメされてはいるけど、こういう人達って現実にいるよな。
主人公の元婚約者の名前も爆笑もの。だって、「ディック」なんだもん。英語でディックって言ったら、男のアレのことよ、念の為。主人公はもうディックは要らないのねー、そりゃそうよねー、と、やはり笑い転げるあたし。
笑ってばかりもいられない
でも笑ってばかりはいられなくって、たとえばこのレスボス島に集う女たちの過去を聞いてると、思わず涙ほろりだわ。ネタバレしないように、くわしくは書かないけど、どんな国でも、どんな肌の色でも、みんなひどい目に遭ってこの島に来たのよね……。
司祭エンファジーマの、
「非難もあるけどそれを祝福として受け止めよう」
って台詞は、心にずしんと来たわ。
みんな幸せになっちゃえ
さて、この島にやってきたエイプリルはありのままの自分として幸せになって行くんだけど、ここで幸せになれるのは別にレズビアンだけじゃないの。たとえば、レスボス島のしもべとしてこき使われているオキャマのランス。鎖につながれて打ちひしがれていた、この島唯一の男性である彼にだって、奇跡は起こるの。
ああ、ランス! 良かったわ! あたし、映画観ながら、ずっとアナタのこと応援してたんだから。
エイプリルに捨てられたディックにだって、素晴らしいことは起こるし、 そして、
「(エイプリルが)レズビアンになるとわかっていたら堕ろしてたのに」
なんてとんでもないことを言ってたエイプリルのパパ (自分では敬虔なクリスチャンのつもりでいる)も、最終的にはバムファックよりレスボス島の方がいいとわかるの。これも何故かは書かないわ、ぜひ自分の目で確かめてね。
そう、別に同性愛者じゃなくても、バムファックよりレスボス島に住んだ方が幸せになれるわ。
バムファックは、現実社会のカリカチュア。そして今の現実社会は偽善と弾圧にあふれてる。そんな世界はごめんよっ!
悪=ヘテロ、ではない
だけど、レスボス島のレズビアンたちは、別にヘテロ全体を敵視してるわけじゃないのよ。
だって、高らかに歌いあげてたもの。
「もし全てのゲイやレズビアンが外に出てくれば(カミングアウトすれば)、レスボス島もなくなるのに」
「そしたらヘテロと手を取って、憎むべき敵を探そう!」
って。
あとねあとね、この映画ってセクシュアリティーだけじゃなくて、アメリカ全体の偽善についてもチクリと皮肉ってるのよ。くわしくは、ミサイルのシーンを見て! あのテロ事件の後のブッシュ政策に腹立ててるあたしとしては、よくぞ言ってくれたわ! エライ! すごい! と、感動いたしました。
難点は吹き替え
映画自体は素晴らしいだけに、吹き替えのマズさが気になりました。そう、この映画の売り文句になってるアイドルたちの吹き替えが、致命的に下手なのよ! そのくせ英語音声で見ようにも字幕がついてないってところが、不親切きわまりないと思います。
さらに、吹き替え台本のつんく臭も激しくうざいです。原語では「だぴょん」のようなヘンな俗語も使ってないし、「レズちゃん」に相当するような表現もありません。英語が苦手な人だとこのヘンテコ訳とヘタクソな吹き替えに耐えるしかないので、そのへん注意。
結論
日本語吹き替えと、つんくが絡んでるってことには多大な疑問があるけど、とにかく映画自体はイイから、是非是非観てください。というのがあたしの結論です。