石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

映画『blue』感想

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綺麗だが冗長な思春期叙情物

魚喃キリコの漫画『blue』の映画版。画面はとても美しいのですが、ところどころ冗長な印象も受けました。また、話の構成や雰囲気が原作とずいぶん違うため、原作ファンには向かないかも。ただし、市川実日子の存在感と小西真奈美の甘い声、そしてふたりのキスシーンだけのために見てみる価値はあるかと。

画面こそ綺麗なのですが

この映画でもっともユニークなのは画面の美しさだと思います。タイトルが予想させる通り、青色を盛り込んだ映像が非常に多いのですが、それが絵葉書的な陳腐な画になっていないところがとてもいいです。ラストシーンの家庭用ビデオを使った映像も綺麗で、よく考えられていると思いました。バスの中から見える風景、田んぼの中を走る女子高生など、退屈になりがちなシーンも鮮烈な印象のものが多かったです。

海の描写、くどすぎ

話の中に海の登場する回数が多すぎて、だんだんうんざりしてきます。あれは何なんだろう、都会人が海に対して抱くロマンティシズムの発露か何か?

演技力に問題あり

俳優たちの演技があまり上手いとは言えず、ロングショットや長回しの場面で間が持たない(冗長に感じられてしまう)点も気になりました。余韻を残し観客に行間を読ませようという意図に、演じ手の力量がおいついていないような気がします。

それでも主演二人はまだ、演技力の限界を存在感でカバーし得ていたと思うんです。市川実日子の顔は見れば見るほどシベリアンハスキーにも似た迫力があり、目が離せません。対する小西真奈美は、たいへんな美人に見えるときもあれば、そのへんの普通のねーちゃんに見えるときもあるという不思議な顔立ちで、冒頭に書いたとおり、甘い声が非常に魅力的でした。

しかし主演以外の役者たちは、滑舌が悪かったり、台詞が棒読みだったり、動きが「監督さんに言われたからこう動いてまーす」的にぎくしゃくしていたりで、見ていてときどきつらいものがありました。どうしてもこのキャスティングで撮るのなら、アラが出にくいようにクローズアップや短いカットを重ねてつなぐ方がよかったのでは。それでは狙った通りの映画にならないというのなら、最初からもっと上手な人たちを選べばよかったのに。

まとめ

「テンポも悪いし演技も今ひとつだが、画面の美しさと主役二人の関係には見るべきものがある」という作品だと思います。映画館で見たらイライラするかもしれませんが、ご家庭でビデオやDVDで見るならそこそこいけそうな映画かと。ナルシシスティックな人は、桐島と遠藤に思春期の自分を重ね合わせてうっとりするもよし。興味があったら一度レンタルでどうぞ。