- 作者: 高遠るい
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2007/01/27
- メディア: コミック
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「セカイ系SF百合バイオレンスアクション神伝奇」(で、かつコメディ)
「セカイ系SF百合バイオレンスアクション神伝奇」(帯より)でありつつも軽妙なコメディとしても読める、というすげー特殊な立ち位置の百合作品。面白かったです。1巻だけで完結なのが残念。全5~10巻ぐらいでもっと壮大なバカをやってほしかったなー。
百合要素について
主人公のメガネ女子高生「牧原緑」がそれはそれはガチな百合キャラなのが楽しいです。ノンケの親友(当然、同性)に片想いするところまではまだありがちなのですが、話が進むにつれて、
- 女のコと一緒に風呂に入るとき異様に嬉しそう
- 酔った勢いで女のコとセックスしてしまう(当然、最後まで)
- 敵の戦闘用美少女ロボットの写真集&DVDをオカズにオナニー(そして発見されて『ケッ わたしは美少女なら人間だろうとロボットだろうとなんでもいいのよ』と逆ギレ)
……と、どんどんそのガチっぷりがエスカレートしていくところが素晴らしい。更に、この百合要素が話の後半のための大きな伏線となっているところも見逃せません。
パロディ要素について
『SCAPE-GOD』はまた、古今東西の漫画・アニメ・特撮などのパロディをぎっちぎちに詰め込んだ特異な作品でもあります。読みながらあたしが「これってアレ?」と気づいた、または連想した作品は以下の通り。
- デビルマン
- ベルセルク
- 機動戦士ガンダム
- 新世紀エヴァンゲリオン
- 伝説巨神イデオン
- 仙術超攻殻ORION
- 聖闘士星矢
- グラップラー刃牙
- ウルトラマン
- 宇宙戦士バルディオス
だけど、ライター前田久氏による解説(1話ごとに収録されています)を読むと、そんなもんじゃないですよこの漫画の濃さは。まだまだたくさんの名作のパロディやオマージュが詰め込んであって、実は高遠るい氏本人のバイオレンス漫画『CYNTHIA THE MISSION』のシンシアまで登場しているという細かさです。
ある意味これは、「『ヲタの内面』という楽屋を用いた楽屋落ち」という芸風のようにも見えます。しかし、本当にそれだけでしょうか。「世界の破滅」や「死と再生」などのテーマを語るのに、たとえばシヴァ神だの聖書のハルマゲドンだのを持ち出すのも、『デビルマン』を持ち出すのも、実は手法としては一緒なんじゃないでしょうか。『SCAPE-GOD』は、既に読み手層の中に神話として根付いているさまざまな名作をモチーフとして取り込むことで、セカイ系SFの新たな表現技法を模索してみせた作品なのではないか、とあたしは受け取りました。
まとめ
百合要素もヲタ要素もバイオレンス要素もとても濃いため、かなり読む人を選ぶ作品だと思います。が、あたしには面白かったです。冒頭でも書きましたが、もう少し長い話で読んでみたかったですね。