石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『ミカるんX(7~8)』(高遠るい、秋田書店)感想

ミカるんX 7 (チャンピオンREDコミックス)

ミカるんX 7 (チャンピオンREDコミックス)

ミカるんX 8 (チャンピオンREDコミックス)

ミカるんX 8 (チャンピオンREDコミックス)

ついに完結。ラストが深遠

「ミカ」と「るんな」の合体した巨大美少女戦士「ミカるんX」の戦いを描くSF漫画。8巻で完結。バトルにつぐバトルの連続にはやや食傷ぎみにもなりましたが、深遠なテーマをはらんで物語がたたまれていく(むしろ、開いていく?)ところがおもしろかったです。百合方面もよかった。メインカップルはもちろん、他の意外なカップルも。

百合方面について

メインカップルに関しては、台詞や絵面のギャップを使ったインパクトのつけ方がよかったです。たとえば、8巻第弐拾壱話のミカの大告白と、そんなミカに抱擁されるるんなの台詞との強烈な隔たり具合とか。あるいは、8巻ラストのミカの、男装の麗人風の衣装からは思いもよらない発言とか。悲痛さも愛もかわいらしさもすべて予想外の方向から来るため、そのたび余計に心を揺さぶられまくりでした。

もうひとつの意外なカップルというのは、臍矢さんことペソマルク星人と磐南みわ。7巻の、浜辺でのペソマルク星人の長台詞が最大の見どころ。このキャラらしい笑いをしっかり盛り込みつつどこまでも百合、という展開にはただ目を見張るばかりでした。正直みわというキャラの掘り下げは最後まであんまり足りていなかったように思うのですが、もうこの浜辺の場面で全部チャラってことでいいんじゃないかと。

テーマについて

完結するまで気づかなかったあたしもバカですが、早い話がこのお話って一種の『幼年期の終り』なんですね。言い換えるなら、これは「怪獣や宇宙人や変身ヒーローや巨大ロボをミルクがわりに育った世代が古典的SFテーマを昇華させるとどうなるか」という問いへの答えを出してみせた壮大な実験漫画なのではないかと。表面上の細かなギミックに気を取られている場合じゃありません。これはSFです、それも、本気の。

まとめ

日本のオタク的感性で骨太の百合SFをやり切ってみせた怪作だと思います。ていうかこの漫画そのものが、「もしウルトラマンAの北斗と南が両方女でしかも百合で、途中で南が降板しなかったらどうなるか」という奇抜な設定のifものSFだとも言えますね。万人に合うとは思わないけれど、とんでもない作品であることは間違いないです。