- 作者: タカハシマコ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2007/06/18
- メディア: コミック
- 購入: 19人 クリック: 320回
- この商品を含むブログ (112件) を見る
堪能いたしました。
百合漫画短編集。面白かった! ただ甘いだけじゃなく、まるで上等な柑橘類のように酸味と苦味がほどよく効いたお話ばかりで、堪能いたしました。この可愛らしい絵柄でそれをやるってところがまたいいですね。
この1冊に通底しているのは、少女性あるいは女性ジェンダーに対する怜悧な視線だと思います。凡百の百合漫画みたいに少女という存在をベタベタと大絶賛して終わるでもなく、それでいて無意味におとしめるでもないという絶妙のバランス感覚に惚れました。この怜悧な視線あってこそ、少女の繊細さと残酷さと愛らしさを緻密にはかりとって混ぜ合わせたような素晴らしい作品群が生まれてくるのだと思います。
特に良かった作品
どの作品も好き過ぎて、「特にこれが良かった」というのは選びがたいのですが、あえて選ぶとしたら「みちくさ」と「タイガーリリー」でしょうか。まず前者は、いちレズビアンとしては大変共感しつつも「そこまで言うか!?」と驚愕もしたこの台詞(p38)がすごいんです。
私は「女の子を好きなフリ」をしている彼女が大嫌いなんです
わがままで自分のことしか考えてなくて 小さいころからなんにも変わってない
好きでもないのに好きという無神経さ
好き好きという自分のことが好きなだけのくせに
百合漫画でここまできっぱりと「なんちゃってレズ」あるいは「『なんちゃって女の子好き』な女の子」を糾弾しちゃっていいのかー!? だってこういう「なんちゃって」さんって、読者層にもごまんといるじゃん! と、うろたえまくってしまったわたくしです。でも、そういう思い切った台詞をガツンと入れてくるあたりがエポックメイキングで素敵だし、それでいてただの「なんちゃってレズ糾弾話」に終わらない物語構成もとても良いなあと思いました。
次に「タイガーリリー」について。これは手法としては高野文子さんの「田辺のつる」(『絶対安全剃刀』に収録)によく似ているんですが、それを使って百合をやってしまうというところがとにかくすごい。「こんな描き方があったか」と目からウロコでした。タイトルが二重の意味で内容に絡んでいるところも泣かせます。
まとめ
ビタースウィートでところどころにスパイスの利いた、大人向けの極上のお菓子みたいな1冊です。甘ったるいだけの百合作品にうんざりしている方はぜひどうぞ。