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女体を使って男性ジェンダー規範をなぞるエロ漫画
収録作の全てが女性同士の18禁エロ漫画です。内訳は名門女子校を舞台にした「素直になりたいの」(全6話)と、前作『初めて恋をした。』の続編、そして描き下ろし作品「サマー・アフター・サマー」。男性キャラは脇役でしか出て来ず、エロは全て女性間です。でもねえ。エロ描写はひたすら性器アップと股間刺激のオンパレード、オーガズムは潮吹きまたは放尿といういわば疑似射精表現ばかりで、あたしには少しも女のコ同士の話に見えませんでした。百合というより、女体を使って男性の官能(とされているもの)をせっせと表現している作品だと思います。ストーリーにクライマックスらしいクライマックスがないところも残念。
官能表現は性器中心
商業作品はあくまで売るために描くものなので、需要が(おそらく)ある以上、このようにベタに「性の快楽=股間刺激による液体の放出」という男性ジェンダー規範に忠実な「百合」作品もありと言えばありでしょう。まともに女性とセックスしたことがある人ならば、女性の性感やオーガズムが決してあんな風でないことはわかるんじゃないかと思うんですが、「わかっているかいないか」というのと「何に欲情するか」というのはまた別物ですしね。
おそらく、「とにかくマンコを舐めあって貝合わせでこすりまくって愛液かおしっこを噴出させながらイクのがツボなんだよ!」という方にとっては、これは良質の「百合」漫画であるのでしょう。ただ、女性同性愛者であるあたしにはまったく合わなかったし、百合漫画にもレズビアン漫画にも見えなかったというだけの話です。「百合成分100」%(帯より)を謳いながら延々と男性の官能を表現されても、個人的には困ってしまいます。
クライマックスが肩すかし
「素直になりたいの」(全6話)のクライマックスでの肩すかしぶりにびっくり。一応ピンチらしきものは設定されているのに、問題があまりにも都合よく解決されすぎ。やはりこれはストーリーを楽しむためのものではなく、あくまで「オカズ」として提供されている作品なのであろうと思います。
よかったところ
作中で「レズ」という言葉が一度も使われず、「同性愛」「同性愛者」と書かれていることは高く評価したいです。エロ漫画でこの配慮は画期的だと思います。
まとめ
エロ漫画でありながら「同性愛」というニュートラルな言葉が採用されていることは嬉しかったです。でも、肝心のエロ描写が「性感と言えば股間のみ」「オーガズムと言えば液体の放出」という、シスヘテロ男性の性感(とされているもの)をなぞったものであるところがどうにも合いませんでした。せっかく形の上では全部女のコ同士のお話なのに、少女の着ぐるみを着た野郎同士がハァハァと絡んでいるように見えてしまうんですよ、あたしには。とりあえず前作『初めて恋をした。』もそのうち読んでみようかと思っています。