- 作者: 青井はな
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2010/05/18
- メディア: コミック
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女子中学生同士のキュートなラブストーリー
超田舎の女子校に転校した「結(ゆい)」と、元気娘「凪(なぎ)」との恋物語。かっわいいお話だなー。波乱はあっても嫌味のない展開で、最後まで楽しく読みました。ちなみに中学生同士のお話とは言え、キスもセックスも出てきます。それがよくあるシスヘテロ男性向けポルノとはひと味もふた味も違う繊細さで、読んでて違和感ゼロでした。とにかく男の影すら嫌われがちな百合業界で、あえて結に最初彼氏がいるという設定を持ってきたところにも拍手。さっくり読めて読後感爽やかな、よい百合漫画だと思います。
あえての彼氏設定に拍手
男性キャラの存在が蛇蝎のように嫌われがちな百合ジャンルで、大胆にも冒頭で主人公に彼氏がいるという設定を持ってくるというところに拍手です。さらに、「結と彼氏との関係」「結と凪の関係」の違いも面白いと思いました。この作品では、前者は「“かっこいい彼氏がいる”ってステイタス」(p. 58)重視の幼いものだったのに対し、後者はもっと成熟した関係なんですよ。普通これって逆に描かれることが多いと思いませんか? 「百合関係は幼さゆえの一時的なもの。やがて成長すれば男性と『本物の愛』をはぐくむものだ」みたいに。彼氏設定を使って既製のこうした概念をひっくり返してみせるところに「おお!」と思いました。ちなみに、それでいて決して男女恋愛そのものを軽視したりはしないんですよ、この漫画。凪の両親のエピソードなど、よかったです。
性描写が繊細です
皮膚感覚やおっぱいの感覚を大事にした官能描写がよかったです。野郎目線の粗雑なエロ描写とは雲泥の差。
百合って基本的に女性ジェンダー×女性ジェンダーのパフォーマンスを楽しむジャンルだと思うんですよ。で、ヘテロ男性向け百合ポルノにありがちな「双方の股間の摩擦にばかり執心する」というセックス描写は、あまり女性ジェンダー的ではないと思うんです。股間を唯一の性感帯として感じるというのは、男性ジェンダー規範の「引用」によるものですからね(詳しくはバトラーとか読んでください)。そんなわけで、個人的には百合エロにおける「なぜか女性同士で股間にばっかり執着してセックスするの図」はアウトだと思っているので、この作品のような丁寧な描写を見かけると大変嬉しくなります。
波乱はあっても嫌味なし
「両思いになってキスやセックスにたどりついたら終わり」という紋切り型のお話でないところがいいですね。それでいて、愛の危機として安直に同性愛嫌悪が持ち出されたりしないところにもほっとしました。波乱を乗り切ったふたりの、結末でのキラキラするような姿(特に凪!!)もよかったです。メインプロットの恋愛要素だけでなく、成長物語としてのサブプロットも光っている作品だと思います。
まとめ
初々しくてエロスも可愛い、よく練られたラブストーリーでした。ただ単に相思相愛になってめでたしめでたしではなく、さらにいくつかひねりを効かせてあるところもよかった。波乱を乗り越えて成長したふたりの姿も爽やかです。おすすめ。