石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『STAINLESS NIGHT(全2巻)』(亜麻木硅、蒼竜社)感想

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近未来SFレズビアンエロ作品

18禁エロ漫画。この作品の第一印象は、「『ブルーソネット』レズビアンエロ版」。いや、出てくるのは美少女PKサイボーグじゃなくて美少女アンドロイド(隠れた能力あり)なんですが、謎あり陰謀あり戦いありのSF作品なところがブルソネを連想させるんですよ。画力も高いし、ストーリーも最後まできちんとテンションを保っているし、いっそエロ部分がなくても百合SFとして充分いけたんじゃないかと思えるぐらい面白かったです。ちなみに『Stainless night―2010 linear』『Stainless night―2021 Sayaka』の上下2巻で完結です。

SFとしての『STAINLESS NIGHT』

「エロ漫画の目先を変えるために場当たり的にSF風味にしてみました」っていう作品ではなく、むしろ、最初からSFとしてきっちり成立しているお話の中に「成年誌だから入れておかねば」とあえてエロ要素を入れた漫画だと思いました。そこがとても嬉しかったところ。

やや古い作品だということもあり、今にしてみると設定がなんだか妙な部分もあるにはあるんですよ。たとえば近未来なのに記憶メディアがLDだとか、話の鍵となるCT(コントロールチップ)の能力がちょっとご都合主義的だとかね。でも、お話に勢いがあるので、そんな些細なことはまったく気になりません。美少女アンドロイド(これがまた健気でいいんだわ。主人公に『マスター』とか言っちゃってさー)と主人公少女の間の愛と絆ががっつり描かれている時点で、この作品は立派にSFだとあたしは思いました。おおげさな言い方をするなら、アシモフの系譜ですよね、これは。

レズビアンエロ漫画としての『STAINLESS NIGHT』

絡みの描写はどれも、「唐突」「明るい」「あっけらかん」といった感じですね。生えてる人がひとり(でも『アトラク=ナクア』がレズゲーであるのと同じく、『STAINLESS NIGHT』もレズビアン漫画ととらえていいんじゃないかと思いました)いて、生えてない人もハーネス付きディルドや双頭ディルドを多用するパターンが多いのですが、どのセックスシーンもあまりにあっけらかんとしすぎていてエロ度は低めです。これならいっそエロ部分を端折って、たまに秘めやかなキスシーンでも入れるぐらいにした方がかえってドキドキもんだったかも。

まとめ

「これだけ面白ければいっそエロなんかなくてもいいぐらい」と思ってしまうほどしっかりSFしている、素晴らしい漫画でした。女のコ同士の愛もばっちりだし、余韻を残す優しいエンディングもナイス。もっと早く読んでおけばよかった。