石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『クイーンズブレイド -Hide&Seek- (1)』(南崎いく、角川書店)感想

クイーンズブレイド -Hide&Seek- (1) (角川コミックス・エース 201-1)

クイーンズブレイド -Hide&Seek- (1) (角川コミックス・エース 201-1)

ビキニアーマー満載のアクションファンタジー。百合としては薄口。

「クイーンズブレイド」、それは4年に一度、女王の座を賭けて開催される女闘士たちの戦い。それに参戦するため出奔した(愛しの)姉・レイナを捕縛すべく、ヴァンス家末妹・エリナのお姉ちゃん捜しの旅が始まる!

というあらすじ(Amazon『商品の説明』より)のアクションファンタジー。見どころは美女たちのビキニアーマーと腹筋。キャラやストーリーは悪くないのですが、百合漫画としては薄口です。エリナからレイナお姉ちゃんへの愛は深いものの、どう見ても姉妹愛の範疇におさまるものですし、それ以外の一見百合なシチュエーションも、恋愛や性愛の要素は注意深く避けられているからです。要するに、百合というより、単に「百合っぽい萌えシチュ」がたくさんある作品と形容した方がより正確かと。あと、画面が人物だけでみちみちになっており、余白が少なすぎて見づらいところもマイナスの印象を受けました。

エリナからレイナへの姉妹愛について

のっけからベッドの上で下着姿の姉妹が抱き合うシークエンスで始まったりして、ぱっと見はかなりガチっぽく見えたりはするんですよ。が、それも結局夢オチですし、どうやらエリナの気持ちは恋愛というより単なるシスコンと解釈した方がよさそうです。

一見百合っぽいシチュエーションについて

一見百合めいたシチュエーションが非常に多い漫画です。列挙すると、こんな。

  • エリナがユーミルとベッドで半裸で抱き合う
  • トモエがベッド上のエリナにのしかかり「人というのは拒まれるほど燃え上がるものですね」「お願いします…是非…私と…」と懇願
  • エリナの台詞「攻めるのは好きでも攻められるのは好きじゃないの♥」
  • エリナを抱きしめるトモエ「嬉しいです!! ようやくソノ気になってくださったんですね!?」

しかし、前後の文脈込みで見るならば、上記はどれも恋愛や性愛とは無関係。表層だけ同性愛っぽく見せかけてあるだけで、実はそうじゃないというパターンの連続なんです。

絵柄は非常に色っぽいので、妄想補完で萌えられる方ならじゅうぶん楽しめるかもしれません。が、個人的には演出があざとすぎる気がしちゃってあまり好きになれませんでした。なんかねー、往生際が悪いというか、「これは同性愛なんかじゃないんです! 違うんです!」といっしょうけんめい言い訳しながら微エロ百合やってるように見えちゃうんですよね……。固い言い方をするなら、女性同士の関係から生まれるエロスから、異性愛至上主義の牙城をおびやかさない部分だけをこずるく横取りしているようにも見えてしまい、そこにひっかかりを覚えました。

絵と画面構成について

おねーちゃんたちのビキニアーマーや腹筋の描写は非常にナイス。カッコいいです!

ただ、コマのほとんどが人物でみっちみちで、余白や背景があまりないところはちょっと気になりました。絵自体はとても綺麗なんですが、あまりにも「間」がなさすぎて読みづらい印象を受けます。このへんは好みによって評価が分かれるところかも。

まとめ

キャラは魅力的だし絵も色っぽく、お話自体は生き生きしています。しかし百合方面については、妄想補完が得意な方以外はあまり期待しない方がいいかも。画面のみっしり感も、人を選ぶかも。とりあえず2巻以降に期待。