- 作者: 青木光恵
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2008/08/07
- メディア: コミック
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ゆるさとエロさがいとおしい完結編
最終巻。1巻と同じく、女女恋愛にも男女恋愛にも独特のゆるさとエロさがあって、そこがとてもよかったです。百合カップルのちえりと美果に関して言うと、相変わらずの人間くさいダメっぽさの中にドラマとしての山場がきっちり仕込んであって、ハラハラしつつも楽しく読むことができました。
ちえりと美果について、あるいは「ネバーランド」について
今回読んでていちばんびっくりしたのが、ちえりから美果への
という爆弾発言(pp. 107 - 109)。これって実際女のコ同士の関係においては「言ったら終わりのこと」(p. 110)であり、でも非常にしばしば「ほんとのこと」(p. 110)だったりするわけで、当事者としては「そこまで描いちゃうの!?」と驚愕することしきり。ほんっとにもう、あたしらこういう痛い現実に何度煮え湯を飲まされてきたことかと思うと涙を禁じ得ません。どうせ私達の付き合いなんて今だけの話じゃん!
そのうち誰か男の人と結婚して子供生んだりするんだからさ!(引用者中略)
店長か私んちに居候して好きなことやって女の子とセックスして!
そんなのただのネバーランドじゃん!!
けれどもそこで「というわけで、女の子同士の愛は儚いからこそ美しいの☆」みたいな寝言を言って終わらないのが、『パパイヤ軍団★』のすばらしいところ。詳しくはp .145の大ゴマでの美果の決め台詞をどうぞ。「ネバーランドじゃん!!」というちえりの台詞に対する完璧な切り返しが、そこにあります。ていうかあれはもう、非の打ちどころのない愛の返歌ですよね。一生に一度でいいから言ってみたいぜ、こんな台詞。
この異性愛社会での女のコ同士の関係の不安定さを、「なかったことにする」あるいは「美化する」という手法で処理する百合ものは山ほどあります。でも、『パパイヤ軍団★』は、そのどちらでもない。あえて関係性の脆さを真正面から見据えた上で、それをも包み込んで女のコ同士の愛を全肯定するという力技に惚れました。いやー、よかった。とは言え美果はこれからもいらん苦労を山ほどしそうなのですが、がんばってほしいです彼女には。
その他
女女恋愛のみならず、男女恋愛もどれもえちくてキュートでよかったですよ。あと巻末4コマの「仮性包茎」に爆笑。わかるわー。
まとめ
今回もとても人間くさくていとおしい1冊でした。青木光恵さんはずいぶん昔、どこかで「レズまんが描きたい!」と描いておられて、「ぜひぜひ描いてください!」と思ったものですが、今実際にこんな面白いもんが読めて幸せです。1巻ともども、すっごくおすすめ。