石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『わさびアラモードっ!! (3)』(もみじ真魚、芳文社)感想

わさびアラモードっ!! (3) (まんがタイムKRコミックス)

わさびアラモードっ!! (3) (まんがタイムKRコミックス)

ネタ切れでエロに走った(?)最終巻

日本旅館の後継ぎ「茜」と、日本大好き外国人の「アオイ」との百合カップルをめぐるドタバタコメディ、最終巻。3巻に至ってついにネタが切れたのか、「オカズでござい」風の安っぽいエロが1冊の3分の2ぐらいを占めています。茜とアオイは個性の薄い単なる萌え記号として消費されるのみで、最後の2話以外は百合っぽさも希薄。1〜2巻が面白かっただけに、残念です。

ついにネタ切れか

この巻の特に前半は、ひたすら茜とアオイが脱がされて「ヘテロ男子向けのオカズ」を提供しているばかりです。茜もアオイもただの個性の薄い萌え記号として消費されるだけで、1〜2巻のあの「シャイだけど芯の強い女将」/「女のコ好きなエキセントリック外人」というキャラクター像はほとんど見る影もなし。エロ自体もどこかで見たような退屈なものばかりで、非常に残念でした。

『わさびアラモードっ!!』はもともと、「ハグされると相撲をとってしまう茜と、ヤマトナデシコ好きの変な外人・アオイの相撲勝負」というアイディアを核にした読み切りギャグ漫画でした。端的に言うと「百合で相撲」という無茶苦茶さがお話の核だったわけです。よって、茜の相撲グセがおさまり、アオイとのモノガマスカップルが成立してしまうと、何か他の核を持ってくる必要があるわけです。1巻ではアオイのオンナノコスキーっぷりを、2巻ではじーさんズのハチャメチャな活躍を生かして切り抜けていたのが、ここに至ってついに息切れしてしまったと見ました。

最後の2話について

最終エピソード「最後のワガママ(前編・後編)」では、アオイが母国に帰るかどうかを賭けてふたたび茜と相撲で勝負することになります。相撲で始まり相撲に終わるという様式美が楽しいし、アオイの

私を負かしたいなら 膝をつくような熱いキスをください!!

なんて台詞(p. 155)もナイスです。

ただですね、あれだけヘテロ男子に媚びまくった安いエロばかりを展開しておいて、最後に突然百合話をもってきても、「とってつけたような結末」にしか見えないんですよ。無理に3巻まで引っ張らず、全2巻ぐらいでコンパクトにまとめた方がより面白く仕上がったのではないでしょうか。

まとめ

ヘテロ男性向けと思われる安直なエロが多すぎて、ネタ切れ感が否めない最終巻でした。百合コメディとして楽しむのなら、2巻までにとどめておいた方が無難かと思います。