- 作者: 高木信孝
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2008/10/24
- メディア: コミック
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (15件) を見る
きれいにまとまった最終巻。「言い訳」がなければもっと良かったかも
魔法学校を舞台にヒロイン「聖愛(まりあ)」とお姉様「玲有(れいな)」のいちゃラブを描く百合漫画、最終巻。うにゅの正体や聖愛の母の過去など、これまでの伏線をひとつひとつ回収して、お話がきれいに収束していきます。百合方面もなかなかにラブくて良かったのですが、いちいちキスに「言い訳」が用意されているという点はどうかと。これさえなければもっとよかったのになあ。
怒涛の伏線回収について
聖愛が魔法を使えない理由はうにゅの正体と関係があり、さらにそこには聖愛の母が絡んでいます。そのへんの事情が1巻からの伏線と絡めて端的に説明され、読者はついに謎が解けるカタルシスを味わうことができます。1巻での聖愛の初めての魔(デーモン)戦を見て「あれ?」と思われた方なら納得すること間違いなしの、整合性のある展開でした。
欲を言うと、玲有の説明台詞にばかり頼らず、さまざまな出来事の中で聖愛自らが少しずつ「気づく」とか「思い出す」とかいう部分を作ってくれたらもっとよかったかも。とは言え、これが最終巻ですし、ページ数の加減もあるでしょうから、結局このへんがベストな落としどころなのかもしれませんが。
百合方面と「言い訳」について
今回、玲有が聖愛を選んだ理由が月姫先輩と玲有本人の口からそれぞれ語られるのですが、どちらもラブくてぐっときました。特に後者は、そう聞かされた聖愛の反応も含めて悶絶もんのラブさです。唇ちゅーが多いところもいいし、とりわけ最終回の、さんざん邪魔が入って焦らされた後でのキスもよかった!
……ただですね。それらのキスにいちいち「言い訳」がくっついているところが、かえすがえすも残念です。たとえば19話「やっぱりネコが!?」では魔物の影響でネコ化した玲有がいきなり聖愛の唇を奪うのですが、その後ネコ玲有は無差別に他の人にもキスしまくっており、結局愛ゆえのキスでもなんでもないんですよね。つまりこれって、「魔物のせいなんです! 自分の意志じゃないんです!」という言い訳を用意することによって、異性愛規範にへつらいつつ女同士のエロティシズムだけを都合よく収奪するという、レ・ファニュの『吸血鬼カーミラ』以来のヘテヘテ手法なわけです。そのへんが興醒めと言えば興醒め。
最終回のキスについても、わざわざ「マギーの証をあなたに…」なんて台詞を持ち出して「誓約の認証であること」を強調しなくてもよかったのに、と思います。「好きだから/触れたいからキスしたい」じゃいかんのか?
まとめ
伏線がきれいに回収された、大団円の最終巻でした。キスにいちいち言い訳が用意されていなければもっとよかったとは思いますが、1巻の時点であれだけ恋愛色が薄かったふたりがこれだけラブラブ両想いになったことだけでも高く評価したいと思います。深く考えずに読めるライトな百合漫画をお探しの方におすすめ。