- 作者: 中村明日美子
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2002/06
- メディア: コミック
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美しく妖しくどこかユーモラスな性愛短編集(百合話あり)
収録作「コーヒー砂糖いり恋する窓辺」が百合話です。レズビアンの未亡人が気に入った女学生を篭絡するエロエロ話と見せかけて、実はかわいらしい初恋譚だったりするという二重構造が面白かったです。その他の作品も、質感にあふれた美しい絵柄と、「エロくてグロいのにどこかユーモラス」という独特の雰囲気がとてもよかった。
「コーヒー砂糖いり恋する窓辺」について
このお話の主人公「奥さま」は、若く美しい未亡人のレズビアン。メイドのヨーコの身体を弄びつつ、窓から見かける女学生の「フエちゃん」をたらし込むのに夢中です。言葉巧みにフエちゃんに近づき、メイドとして館に住まわせ、一方でフエちゃんの彼氏を身体で誘惑し……と、その手練手管だけを見ていれば、彼女はまさに好色な妖婦。実際彼女の姦計はうまくいき、首尾よくフエちゃんとのセックス(これがまたエロい)にまでこぎつけてますしね。
でもね。この人って結局、妖婦と見せかけて実はただの頑是ない子供だったりするんですよね。最後のページで子供のように小さく背を丸めて泣く奥さまの幼さとかわいらしさが、この作品のいちばんのポイントだと思います。また、そこで傍観者としてのヨーコが、「性を搾取される弱者」から「すべてを見通している唯一のオトナ」へと逆転するのもうまい手だと感じました。このコントラストが奥さまの子供っぽさ・いたいけさを一層引き立たせ、より味わいの深いラストシーンを演出していると思います。レズビアンをただの淫らな誘惑者として描く作品は多いけれど、最後の最後でその路線から180度転換してみせるところが、この漫画の新しさであり面白さですね。
その他の作品について
「コーヒー砂糖いり(略)」もそうなんですが、とにかく美しく妖しい絵柄が魅力的です。特に唸らされたのが、肩甲骨の色っぽさと、オッパイの質感。後者に関して補足すると、オッパイって同じ大きさでも水に浮くのと浮かないのがあるじゃないですか。言い換えるなら前者は触る手からこぼれそうにふにふにと柔らかいやつで、後者は弾力でぱよぱよと手を押し返すやつなんですが、その質感の違いがきっちり描き分けてあるんですよね。これには感動。
あと、エロとグロがほどよく共存する中にどことなくユーモアが漂っているところもよかった。アニマルセックスやカニバリズム、ゲイセックスに女性×ドラァグクイーンのセックスなど、規範を逸脱した作品オンパレードなのに、どのお話も必要以上にテンパらない感じなんですよ。
まとめ
絵柄も、独特の雰囲気も、レズビアンの描き方も非常に面白かったです。この不思議な作風は、一度読んだら癖になりそうだと思いました。