
- 作者: 望月菓子
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2008/10/27
- メディア: コミック
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女教師と「アプリガール」たちのドタバタコメディ(微百合あり)
実体化された人口知能『アプリガール』たちの教育を任された新任女教師『黒瀬潤(くろせうるみ)』の悪戦苦闘を描くドタバタコメディ。一部百合っぽい展開ありです。ただし、それがお話の本筋というわけではなく、全体的にはあくまでギャグ及びキャラたちの成長に重点を置いた内容となっています。絵・ギャグ・エロ等にこなれていない感じこそ目立ちますが、この設定でピグマリオン的な支配欲全開のストーリーにもっていかないところは非常に面白いです。
百合展開はこのへん
『おとして↓アプリガール(1)』における百合っぽいシークエンスは、以下の2点です。
- 保健委員アプリ「菖蒲(あやめ)」が潤に親切にされて惚れてしまい、結婚を迫る
- 友達が欲しい園芸委員アプリ「木蘭」が、自分を理解してくれたアプリ「空」と手をつないで頬染める
ただし、前者は「結婚できないなら先生に性転換してもらおう」という方向に話が転がっていくため、女同士であることへのこだわりは皆無。後者についても友情の範疇ととらえることができ、百合かどうかは解釈が分かれるところだと思います。というわけで、百合方面にはあまり過大な期待をせずに読んでおくのが吉かと。
ピグマリオンではなく「負うた子に教えられ」
「パソコンから出てきた美少女を教育する」という設定だけ見ると、いかにもピグマリオン的な支配欲と性欲が横溢するお話っぽく見えてしまいます。しかし、この作品は主人公を世慣れない新米女教師に設定することで、そうしたありふれた展開から逃れ、新しい境地を切り開くことに成功していると思います。
一人ぼっちで自分の世界に閉じこもって生きてきた潤には、実は生まれたばかりのアプリガールたちと同じぐらいに未熟な面が多々あるんですね。だからこそ、アプリたちを教えつつ、むしろ自分こそが彼女たちとのふれあいを通じて成長していくというわけ。つまりこれってピグマリオンどころか「負うた子に教えられ」的なお話なわけで、そこが非常に斬新だと思いました。
あちこち生硬さも残る感じ
初単行本とあってか、絵・ギャグ・エロ等にどことなくぎくしゃくした感じが残るのは否めません。絵は左向きの顔面アップ主体で体の動きが固く、そのためにせっかくのギャグのパンチ力が削がれてしまっている感じ。また、エロに関しては、ご都合主義的に突然出てくるテンプレエロ表現(触手だの下着脱がしだの乳もみだの)があざとすぎて興醒めだと思いました。そうまでして無理やりエロシーンを入れなくてもいいんじゃないか、と個人的には思うんですが、これって掲載誌のニーズだったりアンケート対策だったりするんでしょうか。
まとめ
百合っぽい展開は、少なくとも今のところは「ギャグの一環」または「友情と取れる範疇」としてしか出てきません。よって、百合漫画というよりあくまでスラップスティックコメディとして読むのが吉。絵・ギャグ・エロにはいささかぎこちない点もありますが、アプリたちよりむしろ潤の変化に焦点を当てたストーリー自体はユニークです。とりあえず、今後の展開に期待。