石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『ひなぎく純真女学園(2)』(ふくやまけいこ、徳間書店)感想

ひなぎく純真女学園 (2) (リュウコミックススペシャル)

ひなぎく純真女学園 (2) (リュウコミックススペシャル)

燃え上がりつつもじれったい、充実の1冊

ブルジョア女子高生・「樫宮(かしみや)アミ」が清貧クラスメイト「木成ユイ」に恋をする学園4コマ、第2巻。今回は嫉妬の炎が燃え上がったり、告白がらみでドキドキしたり、アミがユイに思いもよらず抱きしめられたりと、1巻に勝るとも劣らぬ熱い展開になってます。それでいて大局的にはあんまり進展していない、というじれったさもまた楽しいです。マーヤに加えて新キャラ「スナオ」がかもし出すオタクテイストも面白く、充実の1冊でした。

熱い展開いろいろ

アミの嫉妬顔が最高

ひょんなことから木成さんの人気が高まり、アミはしばしば嫉妬の炎にさいなまれることになります。で、その時のアミの顔がいいんですよ。瞳孔が開いちゃったままフリーズしていて、おかしいやら気の毒やら可愛らしいやら。そんなに嫉妬しているのにやっぱり木成さんが可愛く思えて仕方がないあたりも、ぐっときました。

告白がらみでドキドキ

あたしの好きな人に
ベタベタ触んないで
あたしの木成さんなの!

とスルッと言える(p. 68)、時もある。なのにいざ当の木成さんに「んー?」と距離を縮められると心臓がひっくり返りそうになって言えない(p. 78)、というドキドキ具合のさじ加減がよかったです。1巻もそうでしたが、この2巻もいわゆるファンタジーとしての「百合」ではなく、多くの人が身に覚えのある「恋愛あるあるネタ」を巧みに散りばめたラブストーリーになっていると思います。

抱きしめられてドキドキ

詳細は伏せますが、ドキドキしつつ同時にほのぼのしてしまう、楽しいシークエンスでした。いきなりの大ゴマにびっくり、その後の展開にもびっくりという、意外性に富む見せ方がよかったです。

にもかかわらず展開はゆるやか

木成さんが天然すぎて、アミの悶々は今のところ壮大なひとり上手にとどまっています。その甘酸っぱいじれったさが楽しいし、天然なのにここ一番でアミのハートを射貫き続けるという木成さんの無自覚な小悪魔ぶりも光ってました。

オタクテイストいろいろ

どうやら数学オタクで物理オタクであるらしいスナ先生の兄「スナオ」がいい味出してます。マーヤもそうですが、いわゆる「萌え」ブーム以前の古いオタクの匂いがするキャラなんじゃないでしょうか。

マーヤはマーヤで、江戸時代へのタイムスリップ話の中でさえ「婦人向け艶本」やら「新刊美得(びーえる)本」を握りしめているあたりがさすがだと思いました。ただし、今回、彼女の腐以外の属性がほとんど出てこないところはちょっと残念。3巻でまた広く深いオタ知識の片鱗をのぞかせてくれるといいなと思います。

まとめ

熱くじれったく甘酸っぱい1冊でした。女のコ同士の恋を非現実的なファンタジーとして扱うのではなく、多くの人にとって共感しやすそうな「あるあるネタ」を詰め込んでパワフルに描いていく作品だと思います。アミの悶々も、木成さんの天然ぶりも、、またサブキャラたちのオタクギャグも皆よかった。というわけで、おすすめ。