- 作者: あらきかなお
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2009/07/27
- メディア: コミック
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ネタ切れっぽい最終巻
魔法少女「ちづ子」「のぶ子」と、マジシャン志望の「ユリネ」の3人が織りなすドタバタコメディ。これが最終巻なのですが、尻切れトンボな印象がぬぐえません。百合漫画としてもパワーダウンしている上に、ネタの古さとストーリーの投げ具合が致命的。1〜2巻とは別作品のようでした。
百合っぽさ減少について
一読して「誰が誰を好きなのか」がわかりづらいです。いや、ちづ子がユリネにハァハァしていること(だけ)はわかるんですよ。鼻血出したり一緒に風呂に入りたがったりしてますからね。でも、そんなちづ子は同時にユリネの母の乳に執着していたりもして、なんだか興奮の対象がブレている印象を受けます。一方、のぶ子からちづ子への執着は雲散霧消しているし(それどころか今回、のぶ子は少年に恋をしていたりもします)、ユリネにも1〜2巻のようなサドっぷりは皆無。そんなわけで、前巻まで保たれていた百合な三角関係のテンションは消失し、特にフックのない「女のコが3人できゃいきゃいしているだけの漫画」と化してしまっていると思います。
ネタの古さについて
別に百合っぽさが減っても、前巻までの毒やエロティシズムや笑いが健在ならそれはそれで面白かったんじゃないかと思うんです。が、この3巻にはそれもなく、むしろ20〜30年前の漫画ですかとツッコミたくなるような古いネタが目立ちます。今どき入れ替わりネタとか「恋人出現かと思ったらいとこでした」ネタってどうよ。
いや、いくら古典的なネタでも、見せ方次第でいつの時代でも楽しく読めるとは思うんですよ。でも、この3巻のそれは、ヤケクソかあるいは読者への嫌がらせかと思うほどに何のひねりも加えられていない古めかしさでした。わざとなんでしょうかね、これ。たとえて言うなら、「レストランに入ったら、昨日の冷や飯と、具がほとんど残っていない冷えたみそ汁を堂々と出された」みたいな感じで、たじろいでしまいました。
ストーリーの投げ具合について
ポイントは以下の2点。
- 黒井さんはどこ行った
- 最終回、他にやりようがなかったんですか
特に後者が深刻かと。魔法の世界ネタとか正体告白ネタとかで、他にいくらでも盛り上げようがあったと思うんだけどなあ。シュールな、あるいは脱力系の面白さを狙っての展開だったのかもしれませんが、それにしては最終ページで急にありがちな「いい話」に回帰しようとしていたりするところが解せません。
まとめ
1〜2巻とはずいぶん違う、非常に残念な最終巻でした。別に百合漫画じゃなくなってもいいから、せめてギャグ漫画としてのキレとかひねりとかを維持していてくれたらよかったのに、と思います。