- 作者: ちんじゃおろおす
- 出版社/メーカー: 廣済堂出版
- 発売日: 2010/02/26
- メディア: コミック
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「異性装」「百合」「BL」が入り乱れる学園ラブコメ
女のコになりたい「力」(♂)と男のコになりたい「藍」(♀)の双子が制服を取り替えて学校に通うという、「とりかへばや」系のコメディです。ポイントは、力も藍も、想い人が同性であること。オチもラブラブな百合・BLエンドです。ジェンダー観に多少ステレオタイプ的なところがないではないですが、全体的には爽やかなラブコメとして楽しめる作品だと思います。
よかったところ
世に「女装少年」「男装少女」「BL」「百合」のそれぞれをテーマとするフィクションは多々ありますが、それらの要素をいわば「全部乗せ」して、しかもくどくなっていないところが面白かったです。主役ふたりには悩みも屈折もあるんですが、お話そのものにはトランスフォビアもホモフォビアもなく、最後まで気持ち良く読むことができます。特にオチのラブさは必見。ちなみに百合カプにはキスシーンもありますよ。
百合方面について
藍の好きな人「黒木しき」(♀)がいい味出してます。「保健室のベッドで密着」などの微エロなシークエンスも担当しつつ、ただのいちゃいちゃ要員にとどまっていないんですよこの人。藍との関係に予定調和の香りがなく、「なぜ、この人はこの人が好きなのか」がきちんと伝わってくるところもよかった。
「士は己を知る者の為に死す」じゃありませんが、人って結局「自分の真価をよく知って、認めてくれた人」に強く惹かれるものだと思うんです。ジェンダーが揺らいでいる藍の側だけでなく、黒木さんもまた藍の何気ない言葉に救われ、ますます好きになっていくという展開がいいなと思いました。
難点はジェンダー・ステレオタイプ
「男は料理しない」「料理が上手なのは女」という、旧態依然としたジェンダー・ステレオタイプがちらりと出てくるところがちょっと残念。せっかく黒木さんに「(藍や力の格好が)どっちだって同じよ――」と言わせている(p. 127)作品なのに、そのへんがちょっともったいない気がします。
まとめ
トランス系のテイストを持ちながら百合/BLとしても楽しめるというユニークなラブコメでした。ごくごく一部に男はこう、女はこうというステレオタイプの香りが漂うところだけは気になりますが、全体としてはさっくり読めてラブラブな百合/BLストーリーだと思います。同性同士の恋愛のみならず、ジェンダーのゆらぎとその肯定がツボな方におすすめです。