石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『Raubritter*』(再田ニカ、一迅社)感想

Raubritter* (IDコミックス)

Raubritter* (IDコミックス)

美女大活躍の痛快百合ストーリー

女のコ専門で人助けする秘密クラブ「Raubritter」(ローブリッター)の物語。情熱的で大胆、かつ柔らかさと聡明さを併せ持つお話で、とても楽しく読みました。「百合版チャーリーズ・エンジェル」とでも呼ぶべき面白みをたたえつつ、実は完全非暴力なお話であるところがユニーク。女性同士の愛やセックスが「カジュアルで、でもとても大切なもの」として描かれているところも嬉しかったです。キャラ立ても手堅いし、テンポの良い話運びも心地よく、1冊で終わってしまうのがもったいない作品だと思います。ぜひ2巻を出してください一迅社さん。

愛と官能について

序盤でいきなり3P突入というフルスロットルな展開に惚れました。ちなみに3Pと言っても、エロ漫画によくあるような「オカズでござい」風味は皆無。全員同意のもとで気持ちイイセックス、楽しいセックスをカジュアルに味わう雰囲気が心地よいです。ポイントは、性器の摩擦にばっかりフォーカスするのではなく、する側の手と目の快楽にも力が注がれていることですね。これを描くか描かないかで、Hシーンの百合っぽさは天と地ほども変わってくると思います。

中盤以降で描かれる女女カップルたちが、みなキラキラ輝いているところもよかったです。どの組み合わせにも目もくらむような恋のケミストリーがあって、かつ、「男性的なるもの×女性的なるもの」みたいなヘテヘテな空気はぜんぜん無くて。他の何物でもない、女のコ同士の愛や性を思いっきり肯定するスタンスの漫画だなあと思いました。
唯一難点を挙げるとしたら、一部キャラにいわゆる処女厨っぽさが見られることぐらいでしょうか。ただし、

すべロリで処女ォォォ
おいしそおおおおお

のコマ(p. 29)のあまりのアホアホぶりについ吹き出してしまったのも事実です。とりあえず、処女性にこだわることを「滑稽なこと」とみなす雰囲気はあるわけだし、これはこれでありかと。

波瀾万丈なのに非暴力

変装して潜入捜査したり、お色気攻撃で敵を籠絡したりと、Raubritterの面々はチャーリーズ・エンジェルばりの大活躍を見せています。ところがよく見てみると、波瀾万丈の展開にもかかわらず、暴力シーンがひとつもないんですよ。もっと言ってしまうと、この物語には絶対悪が存在しないんです。それっぽく登場するSMパーティーも実は「悪の巣窟」なんかではないし、SMと暴力がまったくの別物であることがよくわかるお話になっています。この柔らかな世界観が、非常に新鮮でした。

キャラ立てと話運びについて

まず、メインキャラ「忍」「ヨカナ」「寧々子」のキャラ設定の手堅さに拍手。それぞれ「セクシー」「ボーイッシュ」「ロリぷに」という王道を押さえつつ、意外な側面もしっかり持っていて、奥行きのあるキャラクタとなっていると思います。

フラッシュバック(技法としての)を多用した、テンポ良い話運びもよかったです。伏線が次から次へと小気味よく回収されていくところも。ストーリーは平明なのに、その見せ方が徹底してうまいんですよ。

まとめ

えっちでパワフルで、読むと元気になる百合話だと思います。カジュアルで愛情たっぷりの性愛描写も、明るくアップテンポなストーリーも、キャラたちの魅力もみんなよかったです。冒頭にも書きましたが、この1巻だけで終わってしまうのは非常にもったいない感じ。続編を強く希望します。