石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

百合アンソロジー『つぼみ VOL.10』(芳文社)感想

つぼみ VOL.10 (まんがタイムKRコミックス GLシリーズ)つぼみ VOL.10 (まんがタイムKRコミックス GLシリーズ)
大槍葦人

芳文社 2011-02-12
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今回やや低調

芳文社の百合アンソロ、第10巻。残念ながら今回は「これだー!!」とビビッとくるような作品は見あたりませんでした。ところどころに面白い場面があることはあるのですが、全体的にインパクト不足。たとえるなら「散発的な単打ばかりで、スコアにつながらない」みたいな、不完全燃焼感の漂う1冊だと感じました。連載作品がカタルシス前の「ため」の時期だったり、あるいは珍しくオチが弱かったりする一方で、読み切り作品も今ひとつパンチ不足だった気がします。

このへんは単発ヒットかなと。

「ひみつのレシピ (8ページめ)」(森永みるく

若槻が部長を意識するあまりかえって手が出せなくなっているところがまず楽しかったです。前から思ってましたが、「女同士だから」と気軽にセクハラするのは基本的にノンケのすることで、本気で好きになっちゃうとキスやボディタッチの重みってずいぶん違ってくるものですからね。初恋の乙女だったりすると、特に。部長がうっかり若槻の色気にドキドキしてしまう場面もよかったです。ただし、まだ野球で言うと着々とランナーを塁にためている段階であって、見ていてじりじりしてしまうことも確か。早くランナー一掃のタイムリーが見たい……!

「花と星(第3話)」(鈴菌カリオ

前回から続くお姫さま抱っこネタの展開に拍手。王道をあえて外してみせる、この飄々としたセンスが好きです。手つなぎの場面もナイス。卓球や星野の過去話も絡んでお話はいよいよ核心に迫りつつあり、「ランナー3塁、ワンアウトでバッター2ストライク」ぐらいの位置かと。続きが楽しみです。

「最後の制服 とくべつへん」(袴田めら

首筋チューのエロティックさがよかったです! でも、4ページと非常に短い作品なので、「スター選手が代打でセンター前ヒットを放ったと思ったら、代走と交代してそのまま帰ってしまった」感じ。おとなしく4月に芳文社から出る特装版『最後の制服(上・下)』(描き下ろしがそれぞれ20ページあるそうです)を待つことにします。

「ガールは待ったなし」(縞野やえ)

キャラクタの不敵な表情がいいし、途中から奇想天外な方向に転がって行くストーリーも面白かったです。惜しむらくは説明台詞の長ったらしさと、メカデザインの弱さ。野球なら「当たりは強烈だが飛んだ方向が悪く、1塁打に」ってなところでしょうか。

このへんはファウル。

「しまいずむ(その15 あきらさん)」

遥と桜のラブ度が新キャラにつつぬけなところは面白かったのですが、「しまいずむ」にしては珍しくオチが弱かった気がします。

三振。

「Green.(エピソード5)」(大朋めがね

pp. 254〜255、古すぎ。どっちのキャラにも共感できず。

まとめ

『つぼみ』にしては物足りない1冊だったと思います。長く刊行していればこんな時もあって当然なのかもしれませんが、1本ぐらいは文句なしのホームランが見たかったです。VOL.11に期待。