石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

LGBT労働者の53%が職場ではカミングアウトしていない(米調査)

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ヒューマン・ライツ・キャンペーンの調査で、米国のLGBT労働者の53%が職場ではクロゼットのままだとわかりました。職場で私生活について嘘をつかざるを得ないと答えた人は35%、LGBTに対し否定的な職場を辞めたことがある人は9%いたそうです。

詳細は以下。

HRC Study Shows Majority of LGBT Workers Closeted on the Job | Human Rights Campaign

これは"Cost of Closet and the Rewards of Inclusion"(直訳すると『クロゼットのコストと包摂の報酬』)と題された調査で、米国全土の計800人のLGBT労働者と、非LGBTの労働者について調べた結果をまとめたもの。

職場におけるLGBTたちについてわかったことをいくつかざっくり抜き書きすると、こんなです。

  • 職場ではカミングアウトしていない(クロゼットのままである)……53%
  • 職場では私生活について嘘をつかざるを得ない……35%
  • パートナーや子供、その他の家族の世話で休むため、嘘をつかねばならなかった……14%
  • 性的指向を隠すため疲れ果てている……20%
  • ジェンダー・アイデンティティーを隠すため疲れ果てている……15%
  • 職場で、LGBTに対し否定的な発言を聞いたことがある……25%
  • LGBTに否定的な職場環境のため、仕事に集中しにくい……9%
  • 「LGBTに否定的な職場だから」という理由で他の就職先を探したことがある……22%
  • 「LGBTに否定的な職場だから」という理由で会社を辞めたことがある……9%
  • 「LGBTを受け入れている職場だから」という理由で今の会社にいる……26%

Googleや北米トヨタなどがLGBT社員の権利保護に力を入れている理由が、まさにここにありますね。せっかく高いコストをかけて採用した社員が、職務とは関係のないこと(性的指向やジェンダー・アイデンティティーなど)で集中力を削がれたり、他の会社に転職してしまったりしたら、企業にとっては大損害だからです。

さて、ここで、「黙ってないで言えばいいのに」とか「自分で勝手に隠しておいて被害者ぶるな」とかお考えになる非LGBTの方もいらっしゃることでしょう。しかしね、非常に興味深いことに、今回の調査によると、非LGBTの皆さまにはダブルスタンダードがあるんですよ。非LGBTで、「LGBTは職場で本当の姿を隠すべきでない」と答えた人は81%。しかしその一方で、「LGBTの同僚がデートの話をしても平気」と答えた非LGBTは全体の半分もいなかったんだそうですよ。一体どうしろと。結局うちら、黙ってるよりほかないじゃないすか。

逆に「性的指向やジェンダー・アイデンティティーなど仕事に関係ない、わざわざ職場で言わなくてもいいだろう」とお思いの非LGBTの方もいらっしゃるかと思います。そのような方には、調査発表内の以下のパラグラフが参考になるかと。

非LGBTの労働者が、自分たちにも性的指向やジェンダー・アイデンティティーがあり、自分たちのそうした面についてカジュアルに言及していることに気づいていないということはしばしばある。自分たちのステータスがマジョリティーの文化に属しているために、このことについて熟考したり、職場で自分がどれほどしょっちゅう自分のアイデンティティーを明かし、他人にもそうするよう求めたりしているのか気づいたりせずに済んでいるのである。

Non-LGBT workers often do not recognize that they too have both a sexual orientation and gender identity and that they make casual references to these aspects of themselves constantly. However their status as being part of a majority culture shields them from reflecting on this and being aware of the extent to which they reveal their own identity in the workplace and ask others to all the time.

ほんとだよ、もう。LGBTに性的指向やジェンダー・アイデンティティーについて口を閉ざせというのなら、まず自分たちの方から、「うちのダンナが」「嫁が」「彼氏が」「彼女が」などと喋るのを全部やめてみてはどうでしょうか。異性婚でつくった子供の話も禁止ね。いわゆる恋バナや好みのタイプの話、好きな服装の話もやめようね。当然、他の人に「(異性の)恋人はいないのか」だの「結婚しないのか」だの「子供が欲しくないのか」だのと質問するのもダメ。念のために言っておきますが、ここで「俺たちの言論の自由を阻害するのか!?」と逆上されても困ります。要は、自分たちがシスジェンダー(トランスジェンダーでない)の異性愛者であるとあからさまにわかる会話を平気でしておきながら、LGBTにだけ「黙れ」というのはズルイって話ですよ、これ。

なお、今回の調査発表の全文は以下のPDFをどうぞ。上では紹介しきれなかった項目も大量にあり、興味深かったです。

Cost_of_the_Closet_May2014.pdf