Rainbow lorikeet feeding on illawarra flame tree / Tatters ❀
自死したイスラエルのトランスジェンダー女性、May Pelegさんの家族が、「息子」をユダヤ教の戒律通りに男性として埋葬する権利を求めて裁判を起こしていました。最高裁は故人の希望を尊重し、この家族の訴えをしりぞける判断を下しました。
詳細は以下。
May PelegさんはエルサレムのLGBT団体「オープン・ハウス」(Open House)の代表で、自死する前、疎遠だった家族には自分の遺体を渡さず、火葬にしてほしいと遺書に記していました。正統派ユダヤ教徒の母親によって「男性」として埋葬されることを拒否するためです。Mayさんは2014年4月、イスラエルで唯一火葬を受け付けてくれる葬儀場の支払いまで済ませ、遺灰の半分は地中海に撒き、のこりは雄花と雌花を両方咲かせるゴウシュアオギリ(Illawarra Flame Tree)の根元に撒いてほしいと希望していたとのこと。
Mayさんの死後、家族たちは、遺書に反してユダヤ教の法にのっとった埋葬をする権利をもとめて裁判を起こし、地方裁判所で敗訴。その後上訴するも、最高裁は2015年11月24日、「人間の尊厳と自由に関する基本法は、故人の望みを主役とするものである」として、Mayさんが火葬される権利を認める判決を出しました。
「裁判所はMay Pelegの要望や彼女が選んだ道をさばくのではなく、ただそれらをたたえるのみである」と、Anat Baron裁判長は述べた。
“We do not come to judge the wishes and the way of May Peleg, but only to honor them,” said Judge Anat Baron.
トランスジェンダーの人が死後本人の自認とは違うジェンダー(出生時に割り振られたジェンダー)として埋葬されるというのはそう珍しい話ではなく、たとえば米国オハイオ州のリーラ・アルコーンさんがそのパターンでした。Mayさんの場合、すんでのところでそれを逃れたわけですが、そのために遺書や弁護士を手配しておいて最高裁まで争わなければならなかったことに、やりきれない怒りをおぼえます。
Haaretzによると、Mayさんは友達に宛てたお別れの手紙の中で、「あなたがこれを読む頃、わたしは無の状態へと穏やかに移行していることでしょう」と書いていたそうです。実際には「穏やかに」埋葬されるまでにはもう少し時間がかかってしまったわけですが、本人が生前に望んだ通りの木の下で、あるいは海の中で、せめてこれからゆっくりと眠ってほしいと思います。