石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

カナリア諸島のレズビアン・マザー、「生物学的母親ではないから」と洗礼式への参加を断られる

f:id:miyakichi:20160419154825j:plain

スペイン領カナリア諸島のレズビアン・マザーが、「生物学的母親ではないから」という理由で、赤ちゃんの洗礼式への参加を拒否されました。

詳細は以下。

Un cura impide a una madre lesbiana participar en el bautizo de su bebé | España | EL PAÍS

スペインは同性婚が可能な国です。この女性、ユレナ・メデロス(Yurena Mederos, 30)さんは、パートナーのミルビア・アルマス(Milvia Armas, 33)さんと2013年に民事婚で結婚しています。しかしながら2016年4月10日、生後15ヶ月の赤ちゃんの洗礼式のため訪れた教会でユレナさんがベンチに座っていたところ、式の直前に司祭がやってきて、こう言ったのだそうです。

「きみは祭壇には乗れないよ、その子の生物学的母親ではないからね」

"Tú no puedes subir al altar porque no eres la madre biológica del niño".

このカップルは何週間もかけて式の準備をしていたのに、そういうわけで赤ちゃんと一緒に祭壇に上がれたのはミルビアさんと代父母(洗礼に立ち会い、証人となる人)だけ。ユレナさんによれば、司祭はさらにこんなことも言ったのだそうです。

「こんな人たちにはうちの教会にいてほしくない」

"No quiero a gente como esta en la iglesia".

ユレナさんとミルビアさんの家族たちはこの仕打ちに怒り、口論のあげく教会を後にしたとのこと。

この司祭が言っていることが変なのは、ユレナさんのこの指摘にある通りだと思います。

「養子を迎えた母親たちはその子に洗礼を受けさせられるのに、どうしてわたしは駄目なんですか?」

"¿Por qué las mujeres con niños adoptados sí pueden bautizarlos y yo no?".

司祭のホセ・ラミレス(José Ramírez)氏(70)はこの矛盾について、養子縁組した子供たちは「同性婚とは違い、教会によって認められている」のだと説明しているそうです。それならますます、「生物学的な親ではないから」というのは単なる言い訳で、単に同性婚カップルだから差別しているということになると思うんですが。ちなみにこのラミレス氏、ユレナさんたちと事前に洗礼式の打ち合わせを2回した時点では、何も問題だと言わなかったのだそうです。その上で式の当日にこんな扱いをするって、どういうことよ。

なお、後日このカップルの姉妹(姉か妹かは不明)が、別の教会で洗礼式をやり直すため、ラミレス氏に払った費用(30ユーロ)と書類を返してほしいとかけあったのに、どちらも返してもらえなかったとのこと。司祭の意見では、先日の洗礼式は完全に有効なので、他の教会でやり直すことはできないのだそうです。差別はするが金は返さないってわけね。

EL PAÍSのコメント欄を見たところ、「(同性愛という点で)教会のルールを破っているくせに洗礼に参加できないと騒ぐのはおかしい」(大意)てな意見が人気を博しているようです。しかし、あたしはそれには同意できません。スペイン料理ってエビもイカもタコも食べると思うけど、「エビのアヒージョ(あるいはイカの墨煮やタコのガリシア風)を食べたから」という理由で子供の洗礼式に参加できなかった親はひとりもいないでしょ。聖書のレビ記には、「水の中にいてひれやうろこのないものは、すべて汚らわしいもの」だから食べてはならないと書いてあるのに、そこは無視して、同じレビ記の同性愛禁止の部分だけを好んで強調するのは偽善ってやつですよ。ラミレス神父はとっとと非礼を詫びて、30ユーロを返すべきだと思います。