石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

AfterEllen所有会社が閉鎖を否定。しかし、執筆陣からは不信の声

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「クィア女性のためのポップカルチャーサイト『AfterEllen』が閉鎖へ」の続報。AfterEllenの所有会社が閉鎖の「噂」を否定する一方、AEの(元)執筆陣は、同社はアーカイブを残すだけで、従来のような更新はなくなると主張しています。

詳細は以下。

False Rumor: We Are Not Shutting Down! - AfterEllen

和訳すると「偽物の噂:わたしたちは閉鎖しません!」とのタイトルがつけられた上記の一文を発表したのは、現在AfterEllenを所有しているTotallyHer Media社(2年前にAfterEllenを買ったEvolve Media系列の会社です)のジェネラル・マネジャーであるEmrah Kovacoglu氏。Kovacoglu氏の主張をまとめると、以下のようになります。

  • AfterEllenの購読者数や広告収入が期待していたほど伸びず、これまでと同等の投資はできなくなったため、トリッシュ・ベンディクス(Trish Bendix)氏をフルタイムの編集長として雇用しておけなくなった
  • 読者は今後もAfterEllenにアクセスできるし、コンテンツも読め、フォーラムで意見を交わすこともできる
  • 今後はフリーランサーや寄稿者が新しい記事を書いていく

ただし、LGBTQ Nationによると、トリッシュさん側の意見はこれとはだいぶ異なっているとのこと。トリッシュさんの見解では、Evolve Mediaはもうフルタイムだろうとパートタイムだろうといかなるエディターも使う気がなく、「フリーランサーが書いた記事を周期的に載せる」と言うだけ言って、アーカイブを(今のところは)ネット上に置いておくだけのつもりなのだそうです。

これを裏付けるのは、これまでフリーランサーとしてAfterEllenのコンテンツを作ってきた執筆陣のみなさんが、上記のFalse Rumor: We Are Not Shutting Down! - AfterEllenというエントリにつけたコメントの数々。

まずはドロシー・スナーカー(Dorothy Snarker)さんのコメントをどうぞ。

ドロシー・スナーカー 11時間前

要するに TotallyHer(AfterEllenを所有している会社)が言っているのは、AfterEllenのサイト自体は残るということだ。少なくとも当座の間は、だけれども。それはつまり、リンクをクリックしてアーカイブを読んだり、古き良き日の追憶にふけることはできるということだ。しかし、日々の新鮮なコンテンツの舵取りをするエディターやクィア女性は、そこにはもういない。

TotallyHerは、フリーランサーに記事を書かせて新しいコンテンツを出し続けると言っている。しかし、これまでのところ、AfterEllenでレギュラーで仕事をしてきたフリーランサーたちは――わたしも含めて――誰ひとりとして執筆の継続について連絡を受けていない。今回の、編集体制が突然変わるということについてさえ、聞かされていないのだ。Emrah、あなたはこのサイトのライターが誰なのかということすら知らないのでは? または、そんなことは気にかけてすらいないのでは?

以上のようなわけで、何であれ今後書かれるかもしれない新しいコンテンツが、わたしたちのコミュニティを代表するだろうとはまったく思えない。わたしが望むのは、AfterEllenのアーカイブを消さず、アクセスできるようにしておくという約束を、TotallyHerが本当に守るということだけだ。このサイトは、誕生した瞬間から、クィア女性にとってとてもたくさんの重要なことを目撃してきた。このサイトを消滅させるのは、LGBTコミュニティに対する侮辱だ。AfterEllenはわたしたちが造ったのであり、わたしたちにとって大切なものなのだ。

Dorothy Snarker • 11 hours ago

In essence, what TotallyHer (the company that owns AfterEllen) is claiming is that AfterEllen the site will remain up - at least for now. That means you can click on it and see its archive and reminisce about the good old days. But it will no longer have an editor or any queer women steering any daily fresh content.

TotallyHer claims they will continue to work with freelancers for new content. But to date none of the site's regular freelancers - myself included - have been contacted about continuing to write or even given notice about this abrupt editorial change. Like, Emrah, do you even know who the writers for this site are? Or care?

This gives me less than zero confidence that whatever new pieces possibly go up in the future will represent our community. My only hope is that TotallyHer indeed honors its stated commitment to keep the AfterEllen archives up and live. This site has born witness to so many important things for queer women. To allow that to disappear would be an affront to the LGBT community. We built this, it matters to us.

続いて、エレイン・アトウェル(Elaine Atwell)さん。

エレイン・アトウェル 11時間前

ハイ、emrah。わたしはエレイン、フリーランサーのひとりです。お会いしたことはありません、なぜならあなたはわたしたちのうちの誰とも連絡を取ってないから。

Elaine Atwell • 11 hours ago

hi emrah, i'm elaine, one of the freelancers. we haven't met because you haven't contacted a single one of us.

そして、エリン・フェイス・ウィルソン(Erin Faith Wilson)さん。

エリン・フェイス・ウィルソン 11時間前

ハイ、Emron、わたしはエリンです。わざわざ連絡してくれなくてもいいわ。そう、あなたの名前の綴りを間違えて書いたのは、わざとだからね。

Erin Faith Wilson Elaine Atwell • 11 hours ago

Hi Emron, I'm Erin, don't even bother contacting me. And yes, I spelled your name wrong on purpose.

この人たちが全員いなくなったら、もうAfterEllenがAfterEllenじゃなくなるじゃないですか。誰よ、Evolve Mediaが予定している「フリーランサー」って。結局のところ、LGBTQ Nationで指摘されているように、トリッシュさんがTumblrでAfterEllenの閉鎖について公表したため、寝耳に水の広告主たちから突き上げをくらったTotallyHer Media(またはEvolve Media)が、玉虫色のアナウンスで事態をごまかそうとしているだけなのでは。

ちなみにトリッシュさんはこのTumblrの記事が原因で編集長の職を予定より2日早く辞めさせられた上に、約束されていたはずの退職金も取り消されてしまったのだそうです。これに怒ったAfterEllenスタッフのGrace Chuさんが、「真実を語ったことでトリッシュが罰を受けるのはおかしい」「トリッシュへの感謝を示そう」としてファンドレイジングを立ち上げています。詳しくは以下を。

そんなこんなで、やはり、これまで通りのAfterEllenはもう読めなくなると思っておいた方がよさそうです。悲しいわ。

悲しんでいるのはもちろんあたしだけではなく、トリッシュさんのAfterEllenでのおそらく最後の記事に寄せられているコメントの数々なんて、もう涙なくしては読めませんよ。「AfterEllenを知ったのは14歳ぐらいで、ライターやコメント欄の人たちにいろんなことを教えてもらった、ここは仲間がいて、安全で、受け入れてもらえる場所で、タチアナ・マズラニーに恋をしているのは自分だけじゃないとわかった」(要約)とか、そんな声がいっぱいよ。レズビアンはloyalなことで有名だから(どれぐらいloyalかというと、1991年に『L.A.ロー』で女性同士のキスシーンを演じてくれたアマンダ・ドノホーにいまだに感謝し、応援し続けている人が少なくないぐらい)、今さらAfterEllenの親会社(の、白人異性愛者男性)が何をどう取り繕おうと、もう読者は戻ってこないでしょう。長年AfterEllenの「ライバル」だったAutostraddleのシニア・エディター、ヘザー・ホーガン(Heather Hogan)さんが、既にこんなツイートをしていますしね。

そう、AfterEllenで人気のリキャップや記事を書いていた人たちが、続々とAutostraddleに移ってるんです。だから、おそらく読者も自動的にそっちに移っていくことでしょう。あたしも移動して、今後はドネーションなりアフィリエイトなりで頑張ってAutostraddleに貢献することにします。世の中、マッチョ男性の裸体が練り踊るゲイ・メディア(または『LGBTQ』メディア)は腐るほどあっても、レズビアン・メディアはものすごく貴重なんですよ。この火を消すわけにはいかないのよマジで。