レズビアン/バイセクシュアル/クィア女性のためのポップカルチャーサイト「AfterEllen」が、2016年9月23日に閉鎖されるそうです。理由は収益不足とのこと。これから先、レズビアンはいったいどこから情報を得たらいいの!?
閉鎖のいきさつについて、同サイト編集長のトリッシュ・ベンディクス(Trish Bendix)さんが、以下のTumblrエントリで痛惜の念に満ちた説明をしておられます。
trish bendix - Eulogy for the Living
上記によると、2年前にViacomからAfterEllenを購入したEvolve Mediaが、このサイトではママ情報やファッション情報のサイトほどの収益が得られないと判断したため、閉鎖の運びとなったのだそうです。Evolve Mediaは白人の異性愛者男性主体の企業なのだそうで、トリッシュさんはこれを、白人ヘテロ男性が金儲けのためにレズビアンバーやゲイタウン周辺のジェントリフィケーションを引き起こしているのと似たような現象であると説明しています。以下、上記リンク先から引用して和訳します。
まったく同じこの時に、クィアな女性やその文化がエミー賞*1で祝福され、新生児の出生証明書に母親ふたりの名前を両方とも載せることが法律で認められ、わたしたちのサイト名のもととなったエレン・デジェネレスは、わたしたちの世代でもっともよく有名で、好かれていて、まぎれもなく高い利益を上げているTVの、そしてライフスタイルのパーソナリティーとなっている。
どこかに何か断絶があるのだ。AfterEllenは、ただ単にレズビアンやバイセクシュアルやクィア女性たちの、この10年間の間に失われてしまったホームのひとつであるだけではない。それはとてもたくさんの人々にとっての避難所であり、コミュニティであり、バーチャルな教会だったのだ。わたしたち以外の人に、本当にこのことが理解できるのか、わたしは確信が持てない。
At the very same time, queer women and culture is being celebrated on the Emmys, in the legalization of both mothers being included on their newborn’s birth certificate, and our namesake, Ellen DeGeneres, being one of the most well-known, well-liked and undeniably profitable television and lifestyle personalities of our generation.Somewhere, there’s a disconnect. AfterEllen is just one of the homes lesbian, bisexual and queer women will have lost in the last decade. It was a refuge, a community, a virtual church for so many. I’m not sure that some people outside of us can really ever understand that.
そうなのよ。本当にここは「避難所であり、コミュニティであり、バーチャルな教会だった」のよ。この10年以上、レズビアンが出てくるドラマの情報も、映画のトレイラーも、クィアなセレブのインタビューも、みんなここで読んできたのよ。『リゾーリ&アイルズ』も、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』も、『オーファン・ブラック』も、全部まだ日本で放映予定さえなかったころからここで情報を得たのよ。Morning Brewのニュースを読まなければ一日が始まらなかったのよ。これからいったいどうしたらいいんですか、あたしたちは。右を向いても左を向いても自分と同じ性的指向に関する情報であふれかえっているヘテロのみなさんとは、置かれた状況がまるきり違うというのに。
古参の読者ならみんな知ってることですが、AfterEllenはもともと、サラ・ウォーン(Sarah Warn)さんという方が個人で始めた、手作り感あふれる小さなWebサイトでした。それがViacomに買われ、次にMTV/Logoに買われ、それからEvolve Mediaに買われ、そのたびにサイトデザインがコロコロ変わり(一時は本当に見づらくて大変でした)、最近ようやく落ち着いてきたかしらと思っていた矢先にこの悲報。やってられないわ。
創設者のサラさんは、同サイトが閉鎖に至った理由を以下のように分析しているようです。
It's difficult to keep any content site alive today, but especially if it caters to an overlooked/misunderstood/stereotyped minority (cont.)
— Sarah Warn (@sarahwarn) 2016年9月20日
Data has shown for yrs that we make more money than straight women, but advertisers persist in believing we're not worth marketing to (cont)
— Sarah Warn (@sarahwarn) 2016年9月20日
At MTV, we constantly had advertisers wanting to advertise to gay men (on AfterElton), but not lesbians, and I developed a theory (cont)
— Sarah Warn (@sarahwarn) 2016年9月20日
that stereotypes work FOR gay men as consumers (travelers, affluent) & AGAINST lesbians (no $$, don't care about clothes, etc.) (cont)
— Sarah Warn (@sarahwarn) 2016年9月20日
I had hoped time and data would change minds, but still seems the same. Decline of online advertising in general hasn't helped (cont)
— Sarah Warn (@sarahwarn) 2016年9月20日
要約すると、(1)データによればレズビアンは異性愛者女性よりたくさんお金を稼いでいるのに、広告主はそれを信じようとしない、(2)ゲイ男性は旅行好きで裕福というステレオタイプがある一方、レズビアンは貧乏でファッションに興味がないというステレオタイプがある、(3)時間とデータがこうしたステレオタイプを打破してくれるよう願っていたが、いまだに無理なようだ、という話ですね。(1)で言うところのデータについては、うちのこちらのエントリが参考になるかもしれません。
そう、カナダの研究でも、オーストラリアの研究でも、そして世界銀行等による研究でも、レズビアンは異性愛者女性より収入が多いという結果が出ているんです。にもかかわらず、(多くは白人異性愛者男性の)広告主はそうしたデータを無視し続けているというわけ。ひょっとしたらここには、女性蔑視と同性愛者蔑視の両方が働いているのかもなあ。やだなあ。
ともかく、嘆いてばかりもいられません。新しい情報源を、そしてコミュニティを探さなくては。AfterEllenのライターのひとり、ドロシー・スナーカー(Dorothy Snarker)さんが今回の件についてブログで書いていらした以下のお言葉を噛みしめつつ、なんとかアンテナを高くしてネットの海に乗り出そうと思っています。
クィア女性の物語には語られる価値があるのだと信ずることを、決してやめてはいけない。レズビアンや、バイセクシュアルや、トランスの女性たちは「儲けにならない」かもしれないが、わたしたちの命もまた大切なのだ。AfterEllenは、根本的には、いつもそのシンプルな事実を信じ、支持してきた場所だったのである。
Never stop believing that queer women’s stories deserve to be told. Lesbian, bisexual and trans women may not be “profitable,” but our lives matter. AE was a place that, at its core, always believed in and championed that simple fact.