女性との交際をカミングアウトしているクリエイター、ジル・ソロウェイ(Jill Soloway)が、ドラマ『トランスペアレント』で第68回エミー賞コメディシリーズ監督賞に輝きました。家父長制をぶっ倒せと訴える受賞スピーチがいいよ!
スピーチの動画はこちら。
スピーチの後半部分をざっくり訳してみました。
女性や、白人でない人たち、トランスの人々や、クィアな人々を物語の中心に据えることで、世の中を変えることができるとわかりました。
わたしはいつでも、運動の一部でありたいと考えてきました。つまり、公民権運動や、女性解放運動などの一部でありたいんです。このTV番組のおかげで、人好きのしないユダヤ人や、クィアな人や、トランスの人をヒーローにするという夢をかなえることができました。トランス・コミュニティのみなさんに感謝したいと思います。わたしたちはトランスジェンダー女性に対する暴力を食い止め、家父長制を倒さねばなりません。家父長制をぶっ倒せ!
トロフィーをいたずらっぽく構えたこのポーズがカッコいいったら。
tfw you're a queer woman director who won an Emmy for directing your queer trans-themed Emmy-winning show #Emmys pic.twitter.com/RixfMyRNMb
— AfterEllen.com (@afterellen) 2016年9月19日
ちなみに、なぜか生放送の日本語同時通訳ではスピーチの「家父長制」の部分が改変され、「『これまでのものを』打破していくべきだ」というぼやけた言い方にすり替えられてしまっていました。映画『アナと雪の女王』の主題歌"Let It Go"の訳詞で、日本語版ではなぜか父親からの抑圧に対するの怒りを表す部分がきれいに消されてしまった現象とよく似てますね。これってやっぱり、日本が右を向いても左を向いてもイモータンジョーだらけな野蛮国だから、「ジョー様のご機嫌を損ねてはならぬ」といちいち改竄されてるわけ? 英語がわからないと何がどう変えられてしまっているかすらわからなくなるから、マイノリティーは最低でも英語だけは勉強しておいた方がいいわよ本当に。
ところで今年(2016年)のエミー賞では、オープンリー・レズビアンのケイト・マッキノンがコメディシリーズ部門助演女優賞に輝き、女性との交際をカミングアウトしているサラ・ポールソンとジル・ソロウェイがそれぞれリミテッドシリーズ/テレビムービー部門主演女優賞とコメディシリーズ監督賞を獲るという、クィア女性大勝利の授賞式となりました。また、『トランスペアレント』でコメディシリーズ部門主演男優賞を受賞したジェフリー・タンバーがトランスの才能ある人々にもっとチャンスを与えるよう呼びかけたり、『オーファン・ブラック』でついに(本当についに!)ドラマシリーズ部門主演女優賞を獲得したタチアナ・マズラニーが「女性を中心にした番組に出られて本当にうれしい」とスピーチしたりもしていて、白人*1シスヘテロ高齢男性中心主義のアカデミー賞あたりとはあらゆる意味で大きな違いを感じましたよ。「どこを向いてもイモータンジョーが大威張りの世の中だけど、それでもまだ希望はあるってことよね」と勝手に励まされましたよ、あたしゃ。
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*1:本文中に書ききれなかったけど、今回のエミー賞は、ジミー・キンメルがトークショウの司会は(自分も含めて)白人が多すぎると発言したり、コメディ部門脚本賞を受賞したアラン・ヤンがアジア系米国人を力づけるスピーチをしたりと、人種的多様性に関する発言も多かったです。