石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米連邦最高裁が『マスターピース・ケーキショップ』支持

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2018年6月4日、米連邦最高裁が、同性婚ケーキの受注拒否を差別だとされたのは不当であると訴えていたコロラド州のケーキ店を支持する判決を下しました。ただし、この判決はすべての事業主にいきなり「差別のライセンス」を与えるものではない模様。

詳細は以下。

Supreme Court rules in favor of anti-gay baker in wedding cake case / LGBTQ Nation

この訴えを起こしていたのは米国コロラド州レイクウッドの「マスターピース・ケーキショップ」(Masterpiece Cake Shop)というケーキ店。同店はデイヴ・マリン(Dave Mullin)さんとチャーリー・クレイグ(Charlie Craig)さんという同性カップルのウエディングケーキの注文を断り、2012年にこのカップルから訴えられていました。民事裁判でもコロラド州人権委員会(Colorado Civil Rights Commission)でも同店のしたことは公民権法違反と判断され、同委員会はマスターピース(略)に対し、店のポリシー変更、差別に関する従業員のトレーニング、2年間の報告書提出などを命じていました。そしてついに「マスターピース・ケーキショップ対コロラド州人権委員会」が連邦最高裁で争われることに。果たして連邦最高裁は6月4日、コロラド州人権委員会による命令は破棄されねばならないとする判断を7-2で下しました。

判決文は以下で読むことができます。

READ: Supreme Court decision in Masterpiece Cakeshop v. Colorado Civil Rights Commission - CNNPolitics

この判決文で注目すべきは、今回の判断の根拠は「LGBTの人々へのケーキ販売拒否は信教の自由/表現の自由で保証されるから」というものでは全然ないということ。根拠はあくまで、コロラド州人権委員会が「マスターピース(略)」のケースにおいて中立性と敬意に欠ける手続きをしていたというところにあります。最高裁は同委員会が「敵意(hostility)」のもとに同ケーキ店に対して下した命令は認められないと示しただけで、事業主がLGBTの顧客にサービス提供拒否することそのものの是非についての判断は避けているんです。このあたりのことは、Voxが判決文p18のパラグラフをひいて、以下のようにわかりやすく説明しています。


他の状況におけるこのような問題について結論を出すには、法廷でのさらなる精緻な議論を待たねばならない。すべて、これらの争いは寛容な心で、心からの信仰を不当に軽視することなく、そして自由市場において商品やサービスを求めている同性愛者の尊厳を傷つけることなく解決されねばならないということを認識した上で、そのようにされねばならない。

The outcome of cases like this in other circumstances must await further elaboration in the courts, all in the context of recognizing that these disputes must be resolved with tolerance, without undue disrespect to sincere religious beliefs, and without subjecting gay persons to indignities when they seek goods and services in an open market.

要するにこれが意味しているのは、連邦最高裁はこの件に関連している広範な問題については後回しにして、判決をこの個別の裁判における特定の状況に絞っているということだ。そして、この判決が他の企業に対してマスターピース・ケーキショップの持ち主ジャック・フィリップスがしたのと同じことをしてもよいという白紙委任状を与えるものだと解釈するべきではないということだ。

What this means, in short, is that the Supreme Court has punted on the broader issues involved, narrowing its ruling to the specific circumstances of this individual case, and that what it said should not be interpreted as giving other businesses carte blanche to do what Jack Phillips, owner of Masterpiece Cakeshop, did.

ACLUの動画による説明(英語字幕付き)もわかりやすいですね。

そうは言っても保守派は既にこの判決を「信教の自由が勝った」だの「トランプの再選が保証された」だのと解釈して大喜びしているようだし、先行きはいろいろ危ぶまれますけどね。どうなるんだろう、これから。