石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

ブラジル最高裁、ゲイのイエスを描くNetflixコメディへの検閲を覆す

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Netflixブラジルがイエスをゲイとして描くコメディドラマをリリースし、リオデジャネイロの判事が配信停止命令を下しました。しかしNetflixは控訴し、すぐに最高裁が配信停止命令を覆す判断を示したとのこと。

詳細は以下。

www.clarin.com

問題の作品、A Primeira Tentação de Cristo(西題:La primera tentación de Cristo、英題:The First Temptation of Christ)は、Netflixのクリスマススペシャル番組。2019年12月3日にリリースされました。製作を担当したのは、宗教的な風刺ギャグ作品で知られるコメディグループのPorta dos Fundosです。同グループはかつて、最後の晩餐をネタにしたNetflixコメディSe beber não ceie(英題The Last Hangover, 2018)で国際エミー賞コメディ部門を受賞したことがあります。

A Primeira Tentação de Cristoは45分にわたってゲイのイエス・キリストを描くもので、ブラジルの保守的クリスチャンらはこれに憤激。配信停止を求める署名には百万筆以上が集まり、クリスマスイブにはPorta dos Fundosの本部に火炎瓶が投げ込まれるという騒ぎになっていたとのこと。同国のカトリック団体は、この番組は「多数のカトリック教徒の名誉」に対する攻撃であるとして裁判を起こし、2020年1月9日、Benedicto Abicair裁判官が配信の仮差し止め命令を出していました。

しかしながら、Netflixからの控訴が受理された数時間後、最高裁はこの仮差し止め命令を無効とする判断を示したとのこと。最高裁長官のJosé Antonio Dias Toffoli 氏は、この件に関して、表現の自由は「ブラジル連邦共和国が目標を達成するための基本的かつ不可欠な権利」だと述べたそうです。ブラジル最高裁って、大統領自ら‘同性愛嫌悪を剥き出しにしている同国でなお「LGBT差別は犯罪」と認めたところですが、こんなところでもこんな判断を見せてたのねえ。

ただこのA Primeira Tentação de Cristo、日本のNetflixでは配信されていないようだし、公式トレイラーを見ただけじゃどんな話なのかよくわからない("filho da puta"という、スペイン語の"hijo de puta"に該当するフレーズが使われているということだけはわかった)ので、果たしてカトリック団体とNetflixのどちらの主張に理があるのかいまいちつかみかねる気はします。ひょっとしてゲイ描写がものすごくステレオティピカルだったりしたら、カトリックの皆さんが怒ってるのとは別の意味で嫌だと思うしねえ。

確実に言えるのは、白人ではなかったはずのイエスを「白人として」描いてきた古典的宗教画・映画・ドラマ等々には腹を立てない人たちが、イエスを「ゲイとして」描くことに怒るのは理不尽だってことですかね。とりあえず日本語字幕つけて日本のNetflixで配信してくれるのを待ちたいです。