スペインで5月17日の「国際ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日(IDAHOTB*1)」にレインボーフラッグをまとって通りを歩いていた青年が数人から脅され、隣人らが助けに入ったと報じられています。
詳細は以下。
「国際ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日」は、性とジェンダーの多様性を祝い、差別に反対するためのメモリアルデー。2004年に創設されて以来、毎年世界規模でさまざまなイベントが開催されています。より詳しくは以下をどうぞ。
2020年のIDAHOTBのテーマは「沈黙を破る(Breaking the Silence)」。しかしながら、マドリード在住のホセ・ルイス=マルコス(José Luis Marcos)さんがこの日、テーマ通りにレインボーフラッグを身にまとって通りを歩こうとしたところ、家の門を出た時点でもう「ホモ野郎、帰れ(‘¡maricón, vete a tu casa!’)」という罵声が飛んできたとのこと。彼を罵倒したのはその道で鍋を叩いて政権に反対するデモをしていた人たちで、マルコスさんは侮辱された上に、服をつかまれて顔から数センチのところで鍋を叩かれたり、肉体的な危害を加えると言って脅されたりしたんだそうです。
ちなみにこのときマルコスさんは何も言わなかったのだそうですが、絡んできた男は、マルコスさんの側が旗を持って「挑発してきた」と言い続けていたとのこと。これに関して、マルコスさんの見解は以下の通り。
「何の挑発なんですか。ぼくはただLGBTiフォビアに反対する戦いの権利を主張していただけで、それは今回の件で証明されたように、今なお必要なことなんです」
¿Qué provocación? Yo solo estaba reivindicando la lucha contra la LGTBifobia, tan necesaria todavía como ha quedado demostrado con esto
本当だよねえ。なお、この加害者側の「挑発された」という被害感情は、斉藤章佳著『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)で説明されている、DV加害者の心理にも通じるものがあるんじゃないかと思います。以下、同書kindle版のNo. 2688/2753より引用。
DV加害者の男性は一見普通に見えますが、更生プログラムで接しているとひどく臆病だとわかります。ほかの受講者に対しておどおどしたり、目を見てコミュニケーションできなかったり、根底には人に対する不信感や恐怖感があります。まして自分より下だと思っていた女性がちょっとでも自分の意に沿わないことをすると、いえ、場合によっては何もしていないにもかかわらず、勝手に自分の存在や男性性がおびやかされていると感じて、手を上げてしまう。そうやって自身の心理的安定をはかろうとするのです。
要は、自分より下だと思っていた性的マイノリティが堂々と表を歩こうとしただけで、勝手に自分の存在や男性性がおびやかされると思っちゃうんじゃないですかね、こういう人は。始末に負えんね。
話を元に戻すと、幸い騒ぎを聞きつけた近所の人ふたりがマルコスさんを守ろうと駆けつけてきてくれて、うちひとりはバイセクシュアル・プライドの旗を持った女性だったとのこと。さらに別の隣人の通報で警察官が現場にやってきたときには、通り中の人が「ようやく来たか」と拍手で迎えたそうです。そして警官も、マルコスさんを脅していた男がレインボーフラッグを見て腹を立てたのなら問題はその男の方にあると言って、マルコスさんに告訴状を出すよう勧めたとの由。だからまあ、ひどいのは鍋振り回して脅しにかかってきた数人だけだったということになるんだろうけど、その数人に何をされるかわからないのがヘイトの怖いところだから、早めに助けが入ってよかったと思います。こういう事件がなくなるまでに、あと何回のIDAHOTBを迎えなきゃいけないんだろうね?
*1:IDAHO、IDAHTBなどの表記もあります。