石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

『あねいもぉと』(おがわ甘藍、松文館)感想

あねいもぉと (別冊エースファイブコミックス)あねいもぉと (別冊エースファイブコミックス)

松文館 2008-02-26
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百合エロ多め、ただしあくまで行為>心情描写な短編集

18禁エロ短編集。「フレンドシップ(前・後編)」が男性キャラ皆無の百合作品で、他に「湯のむら奇譚」「竜神迎奇譚」「だれにも言えないこと(前・後編)」にも女性同士の行為が登場します。先日レビューした『秘密の女子寮』と違い、どのお話もまったくロリではないことに驚き。いや少女たちの肢体は相変わらず細く美しいのですが、胸の描写が明らかに違うんですよ。ちなみにレズビアン・セックスは「指と舌」系ですが、どうしても貝合わせや69に偏りがちなところがやや退屈。また、心理描写が浅めなところも残念。

「フレンドシップ(前・後編)」について

主人公「亜美」の片想いの相手「ひなた」が、テニス部の先輩「芹香」に食われてしまうというお話。全2話の中で、

  • 芹香とひなた
  • 涼子(芹香の恋人)と芹香
  • 亜美とひなた

の3パターンの女女セックスが展開されます。エロ描写は可も無し不可も無しな「指と舌」系ですが、貝合わせに幻想持ちすぎな感は否めません。前にもどこかで書きましたが、レズビアンセックスでやたらと貝合わせや69ばかり強調したがるのは、「セックスとは粘膜同士の摩擦」「指だと愛撫する側に快感がない」というきわめてヘテロ的な(もっと言うと、ヘテロの中でもセックスが下手な人的な)発想だと思うんですよ。ストーリー面では、結局亜美とひなたはなりゆきでまぐわっているだけで、2人の間に恋が成立してはいないところがひっかかる感じ。ひなたから芹香への思いも、恋愛というよりは憧れの範疇にあり、心情面での盛り上がりに欠けます。もう少し少女たちの心の動きの描写に力が注がれていたら、もっとよかったかも。

「湯のむら奇譚」「竜神迎奇譚」について

どちらも男女エロが登場する(『竜神〜』の方はむしろ男女エロがメイン)作品ではありますが、個人的には「フレンドシップ」よりこちらの方が楽しめました。というのは、どちらの作品も、作中に漂う日本の田舎の風情がとてもいいんですよ。こういう田舎エロばっかり集めた作品集を出してくださらないものだろうか、出たら絶対買うのにと思うほど。

ちなみに「湯のむら奇譚」は、女性ふたりのセックスをのぞき見していた少年少女が、のぞきがバレて4Pに突入するお話。つまり、レズビアンエロス+乱交+ショタです。「竜神迎奇譚」は、奉納神楽を舞う主人公が竜神様と交わり、それを見て欲情した村人が次々にセックスし始めるという物語。「セックスし始める村人」の中に少女と少女の組み合わせがさりげなく入っているところが面白かったです。百合メインのお話ではまったくないのにきっちり百合カプを登場させるという力技がステキ。

「だれにも言えないこと(前・後編)」について

隠核肥大の少女のお話です。ほぼ純然たるヘテロ話で、少女同士のエロスは性的いじめとして登場するのみ。そのいじめのシークエンスにしても、個人的にはあんまり百合とか同性愛とかの範疇には見えませんでした。あくまで「いじめられっ子の隠核肥大少女が、好きな男性と結ばれる物語」と思っておくのが吉だと思います。

まとめ

ロリータという属性を切り離したことがかえってマイナスに働いてしまった作品集ではないでしょうか。百合エロの回数こそ多いものの心理描写は少なく、セックスシーンも一言で言えば無難で、エロ漫画としてのセールスポイントが見つけにくい気がします。ただし、「奇譚」シリーズのいかにも日本の田舎らしい情緒等はとてもよかったです。このあたりの要素をもっとつきつめるなり、あるいは従来通りのロリータ路線を強調するなりした方が、より個性が際立って面白かったのではと思います。