石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『さよならフォークロア』(かずまこを、一迅社)感想

さよならフォークロア (IDコミックス 百合姫コミックス)

さよならフォークロア (IDコミックス 百合姫コミックス)

もう少し掘り下げがほしい感じ

「月曜日に触れ合うと、以前心中した恋人たちの呪いがかかる」という伝承がある女子校を舞台とする百合ラブストーリー。「呪い」の内容が曖昧模糊としている上、メインカップルの心の動きも説明的で、感情面のリアリティが薄い感じ。主役2人のみならず、憎まれ役の「滝沢先生」などももう少し掘り下げて描いた方がよかったのではと思います。絵柄はいつも通り可愛らしいし、キスや軽い接触のシークエンスも多めではありますが、個人的には前作『純水アドレッセンス』の方が好きです。

「呪い」の内容が意味不明

「触れ合ったらおまじないを唱えないと呪われる」という説明が繰り返されるばかりで、呪われたら具体的に何がどうなるのかは最後までわからないままです。「正体不明の呪いだからこそ怖い」という切り口ですらなく、設定の煮詰め方が甘いのではと思います。

足柄山の金太郎になぜ熊と相撲をとるエピソードがあるかというと、「金太郎は強い」と台詞で言わせただけでは強さが伝わってこないからでしょう。この漫画に足りないのは、その発想です。キャラクタの口からただ設定を説明させて終わりではなく、具体的なエピソードで設定に肉付けをする工夫が、もっと欲しかったです。

キャラクタの心情もぎくしゃく

特に真白の側がなぜ高瀬に惚れたのかがうまく伝わってきませんでした。学校を辞めたいほど姉ラブだった彼女がどうして姉から高瀬に乗り換えた(結果として)のかが、なんだかピンと来ない感じ。例によって台詞による説明はしこたまあるんですが、それでもやはり今ひとつきっかけが弱い気がします。表情なり行動なりで、恋に落ちる瞬間のケミストリーをもっと強く打ち出してほしかったところ。

滝沢先生について

滝沢先生は、アンチゲイな態度で終始真白と高瀬のつきあいをやめさせようとするキャラクタ。実は彼女のこうしたふるまいにはある理由があり……という設定なのですが、前半でのキャラ造形が大味すぎるため、後半の心境変化の場面までもが精彩を欠いてしまっているように思います。

なんというか、「『キューティーハニー』の常似ミハル先生を100倍ぐらい薄めてコミカルさを取り除いたヒステリーキャラに、手垢のつきまくったホモフォビック台詞を言わせただけ」って感じなんですよ、前半の滝沢先生は。血の通った人間というより、「恋の障害」という名のぺらぺらな書き割りが役割通りに喋っている感じ。もう少し読み手が共感したり裏を読んだりできるようなとっかかりを序盤のどこかに作っておいてくれたら、クライマックスの感動がより深まったのではないかと思います。

まとめ

絵はキュートだし、キスやいちゃいちゃの場面も多いので、そういう絵づらが萌えポイントな方にはいいかもです。が、あたしにはあまり合いませんでした。「呪い」の設定についても、各キャラの心情についても、もう少し掘り下げがほしかったと思います。