- 作者: 尚村透
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2010/01/22
- メディア: コミック
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今回はオリジナリティありです
男尊女卑を是とする学園で、主人公ソラ(♀)が女の子を守る騎士として戦う物語の第2巻です。1巻は百合アニメの名作『少女革命ウテナ』をなぞりまくった内容で、しかも結局「綺麗な男尊女卑」を称揚するだけの内容だったので、個人的にはついていけないものがありました。しかしこの2巻ではさすがに独自要素も出てきており、百合方面でも熱い大告白があったりして、1巻より面白みが増していると思います。ただし、巻末に収録されている読み切り版「失楽園」は説明台詞のオンパレードで、プロの作品とは思えないできばえ。トータルすると5段階評価で2.5というところでしょうか。
丸被り感現象
またしてもプロローグがウテナめいたおとぎ話なところはなんとかならないのかとは思いましたが、それ以外では1巻ほどのすさまじい丸被り感はないかなと。「警告ペナルティー」という新要素で緊迫感を盛り上げたり、丞上や御手洗の特異な性格をみっちりと追っていったりするところが面白かったです。
「綺麗な男尊女卑」にやや変化が
1巻では女子を虐げる男子の横暴さに憤ってみせつつ、やってることは「男気取り・騎士気取りのソラがハーレム状態で崇拝される」という男性ヘゲモニー礼賛でしかなかったと思うんです。ところが2巻では女のコたちにもう少し「ソラ様と一緒に戦おうとする」(p. 9)姿勢が出てきています。相変わらずの「様」付けに「アンタは昭和の男尊女卑家庭の奥さんか」とツッコミたくなるのは山々ですが、少なくとも彼女たちがエロゲよろしく主人公をちやほやするだけではなく、自分たちなりに戦おうとしているところは評価できると思います。
あと百合部分についても、1巻では前述の騎士様ちやほや状態に加えてあざとい露出があるだけだったのが、今回はもっとド直球な好き感情が描写されています。具体的には、とあるキャラクタの
という大告白(p. 149)の場面がよかったです。前後の流れに説得力があり、単なる甘いちゃ展開とは違うガツンと来る手ごたえがありました。そんなわけで、百合漫画としては1巻よりだいぶ上。…好きです…好きです…っ 好きです緋本さん…!!
読み切り版「失楽園」について
ページを開いてみてびっくり。のっけから説明! 説明! 説明につぐ説明! ユートピア学園の校風やエグザクランのルール、主人公「モモコ」の心情などがひたすら言葉で説明されまくるばかりで、漫画というより設定資料集かゲームの取扱説明書のようでした。さすがに全体の4分の3を過ぎたあたりからは説明台詞の数が減り、ドラマが動き出すのですが、そこまでで既に疲れ切ってしまっていて、少しもお話に没入できませんでした。よほどの尚村透ファンにしかおすすめしません。
まとめ
1巻よりはひっかかりなく読めました。女のコ同士の絆もより熱く盛り上がっていますし、オリジナル要素が出てきたところも好印象。ただし読み切り版「失楽園」は説明台詞オンパレードで、一体なぜこれで連載が決まったのか謎です。画力のみでの判断だったのでしょうか。とりあえず、これから読まれる方へのアドバイスは以下の通り。
- 1冊ずつ買うのではなく、2巻まで一気に読むこと(ウテナを知っている人なら、1巻だけだと投げ出したくなる可能性大)
- 2巻の読み切りには期待しないこと(取説ならともかく『漫画』を読むつもりで読んだら、やっぱり投げたくなる可能性大)