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石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャー。

実写版『美女と野獣』(2017)、ゲイ要素のためマレーシアで上映延期 ロシアで年齢制限(追記あり)

LGBTニュース 映画 ゲイ

US版ポスター 美女と野獣 2017 Beauty and Beast ディズニー re2 69×101cm 両面印刷 D/S [並行輸入品]

脇役のひとりを公式設定でゲイとしたディズニーの実写映画『美女と野獣』が、マレーシアでゲイなシーンをカットされ、さらに上映延期となりました。一方ロシアはこの映画を16禁指定に。米国アラバマ州でも上映中止する映画館が出ています。

詳細は以下。

'Beauty and the Beast' Postponed in Malaysia, Even After 'Gay Moment' Cut - NBC News

この映画で新たにゲイとしての側面を描かれるのは悪役ガストンの子分、ルフウ(ジョシュ・ギャッド)。ビル・コンドン監督は本作のルフウを「ガストンにキスしたいと思う日もある」キャラだと説明しています。またPinkNewsによれば、この映画の終盤にはルフウと男性とのダンスシーンが出てくるとのこと。

NBC Newsによれば、マレーシアの首都クアラルンプールでは当初公開日を2017年3月16日とした『美女と野獣』のポスターがそこら中に貼られていたのに、その後大手映画館チェーンTGV CinemasのWebサイトに、以下のような告知が掲載されたのそうです。

「不測の事態により、『美女と野獣』の公開は延期されました。今後のお知らせをお待ちください」

"Due to unforeseen circumstances, the release of 'Beauty and the Beast' has been postponed until further notice,"

同国検閲委員会のAbdul Halim Abdul Hamid議長はロイターに対し、『美女と野獣』は「ゲイな瞬間」をカットした上でレーティングをP13(13歳未満の鑑賞には成人保護者の助言が望ましいとする区分)としたと説明し、「公開が延期になったとは知らなかった。早く上映が始まるよう願っている」と話したそうです。だから完全に上映が阻止されたというわけではなさそうなのですが、やっぱりカットはされるんですね。イスラム教が国教のマレーシアでは、これまでにも豚が主人公だという理由で『ベイブ』の上映がブロックされたりしているそうですから、無理もないことなのかもしれませんが。

これでマレーシアは、本作品を16歳未満鑑賞不可としたロシアに続き、世界で2番目に実写『美女と野獣』に検閲を入れた国になりました。本国アメリカのアラバマ州でも、あるドライブインシアターのオーナーが「自分たちは何よりもまずクリスチャンである」から「企業からの圧力に立ち向かわねばならない」として上映中止を発表し、話題になっています。またマレーシアのお隣のシンガポールでは、セント・アンドリュース大聖堂のWebサイトに、このリメイクの「ホモセクシュアルな内容」を問題視し、箴言22:6(『若者を歩むべき道の初めに教育せよ。年老いてもそこからそれることがないであろう』)をひいて親への注意を呼び掛ける声明文が掲載されたりもしています。まったく、ご苦労様なことで。

ところで疑問なんだけど、皆さんたかがサブプロットのゲイ要素にここまで大騒ぎするわりに、「少女が毛むくじゃらの野獣と恋をする」というメインプロットには何も言わないのはどういうわけ? イスラム教でもキリスト教でも獣との交わりは罪とされているはずなのに、偽善もいいとこだわ。

なお、城の執事コグスワース役で本作品に出演しているオープンリー・ゲイの俳優、イアン・マッケランは、ニューヨークでのプレミアで、ルフウのゲイネスにまつわる騒ぎを「ばかげている」と評したとのこと。以下、CNNの記事より彼の発言を引用します。

「おとぎ話にゲイの登場人物が出てくるという考えが気に入らない人々は、もし自分自身がゲイだったら、どうして排除されなければならないのかと考えてみるべきだ」

"People who don't like the idea of gay characters appearing in fairy stories should think what they would think if they were gay themselves and why should they be excluded?"

そしてサー・マッケランは、問題のシーンは「急進的な("revolutionary")」ものではないと述べた上で、こんな風に付け加えたのだそうです。

「それについて文句を言い、子供には見せたくないと言うのは、まったくばかげている」とマッケランは語った。「同性愛者を嫌っていて不平を鳴らす人々のことは知っている。あれは映画の中のとても小さな瞬間で、そこまで興奮するようなものではないよ」

"For people to complain about it and say they don't want children to see it is absolute rubbish," McKellen said. "I know people who don't like gay people and make a fuss. It's a very small moment in the movie, no one should get too excited."

案外ふたを開けてみたら『ファインディング・ドリー』のあの「レズビアンカップル」(ではないかと噂されたカップル)(あたしは映画館で2回観ましたが、特にそのキャラがレズビアンっぽいとは思いませんでした)の場面と同程度の全然目立たないシーンだったりしてね。考えてみれば、ハリウッドではほんの半世紀ほど前まで異性同士のセックスはおろか夫婦がひとつのベッドで寝る場面さえ描けなかったのですから、子供向け映画ではまだ歴史が浅いゲイネスの描写が「とても小さな瞬間」程度になるのは当然といえば当然かも。それでもとにかくこうやって議論が交わされることで、「世界は同性愛を含む」というあたりまえの真実がもっと知られるようになるといいなと思います。世界にはヘテロしかいないだなんていう大嘘を、これ以上子供に見せ続けたくはないよあたしは。

追記(2017年3月15日)

BBCから続報が出てました。ディズニーは2017年3月15日、マレーシアでゲイなシーンのカットはせず、公開を延期すると発表したそうです。今となってはマレーシアでの公開自体が実現するかどうか定かではないとBBCは書いています。詳しくは以下を。