石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『暁色の潜伏魔女(1)』(袴田めら、双葉社)感想

暁色の潜伏魔女 1 (アクションコミックス)

暁色の潜伏魔女 1 (アクションコミックス)

百合あり男女恋愛ありの魔法学校もの

まるでハリー・ポッターにおけるホグワーツのような全寮制男女共学魔法学校を舞台にした、「マジカル青春ラブ百合ハートフル学園ストーリー」(帯より)です。お話の主軸は、天涯孤独になってしまった少女・暁(あきら)が、学園にいるらしい生き別れの姉を探すというもの。ギャグあり、姉妹(?)百合あり、まるで『最後の制服』(袴田めら、芳文社)の如月先輩のごとく濃い百合キャラあり、男女恋愛あり、と、にぎやかな1冊でした。1巻はまだキャラクタの紹介と背景の説明という色合いが強いのですが、それでもじゅうぶんに面白く、本格的に話が動き出しそうな2巻以降がとても楽しみです。

冒頭で書いたように女女恋愛だけでなく男女恋愛の要素もきっちり出てくるので、「少しでも野郎がかかわる恋愛が出てきたら嫌」という百合好きさんには向かないと思います。が、あたしはかえってこういうのの方が好きなので、大変楽しく読みました。同性だけで隔離された環境での女女恋愛ってのは、どうも「思春期のホルモン過多でサカってるくせに、身近に男がいないから、手っ取り早く女を代用品にする」っていう「なんちゃって」な方々がかなりのパーセンテージで混じっていそうで、個人的には少し警戒してしまうんですよ(作品にもよりますけど。『最後の制服』や『青い花』みたいなのなら大丈夫)。そこへ行くとこの作品は、異性が好きな人と同性が好きな人が当たり前のように混在しているので、安心して読むことができました。先述の「濃い百合キャラ」こと智(とも)先輩なんて、大好きだわー。

暁と暁の姉かもしれない少女・夜(よる)との心の交流の描写は白眉で、そのへんは姉妹百合と言えば言えますね。あと、コメディとしては、暁の登場シーンだけでもう「これで値段のモトは取った」と確信いたしました。ヲタクキャラのロベルトや、一見クールなのに実はヘンタイ(褒め言葉)な秋也もよかったし、いろいろな意味で買ってよかった作品です。