石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『えんまちゃん』(かがみふみを、双葉社)感想

えんまちゃん (アクションコミックス COMIC SEED!シリーズ)

えんまちゃん (アクションコミックス COMIC SEED!シリーズ)

小学生同士のかわいい友情百合

閻魔大王の娘「えんまちゃん」と小学五年生の「静ちゃん」のかわいい友情百合もの。お話にちょっとレトロな「小学生の夏」の雰囲気がしっかりこめられているところがとてもいいです。また、ほのぼのしたストーリーの中にも相手を大切に思う気持ちや人の心の闇などがきちんと描かれているところなどもよかったです。

小学生の夏

学校のプール、駄菓子屋のアイス、木登りに川遊び、うるさいほどの蝉の鳴き声を聞きながら宿題の写生……などなど、『えんまちゃん』の中には、ちょっと懐かしい「小学生の夏」の空気がいっぱい。そんな空気の中、仲良しの小学五年女子ふたりが一緒に学校行ったり遊んだりお昼寝したりしてるという図は、もうそれだけでなごみます。

百合要素について

同級生の男子から

こいつらさっきちゅーしてたんだぜ 体育館のウラで〜 変態だよ変態!

などど揶揄される場面(p36)こそあるものの、実質的にはそういう行為はありません。でも、えんまちゃんと静ちゃんがお互い別れがたくておでこをくっつけ合って泣くシーンなんて、なまじっかなキスシーンよりもはるかに「仲良し」感が伝わってきました。優しいエピローグも花マルで、とにかく小さな女のコ同士の「仲良し」を描いた百合として秀逸な作品だと思います。

心の闇について

ただ甘ったるいだけの話ではなく、起承転結の「転」にあたるところにちょっと怖いエピソードを仕込んであるところが面白かったです。たとえて言うならここはジンジャークッキーのジンジャーにあたる部分で、これがあるからこそ全体の良さがひきたっているんだなと思いました。

まとめ

ちょっと懐かしい夏の風景をバックに、小さな女のコ同士の「仲良し」感をしっかりと描ききったかわいらしい友情百合作品です。クライマックスでちょっぴりスパイスがきかせてあるところもマル。恋愛要素が薄い百合でもOKな方はぜひどうぞ。