石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『ささめきこと(1)』(いけだたかし、メディアファクトリー)感想

ささめきこと 1 (MFコミックス アライブシリーズ)

ささめきこと 1 (MFコミックス アライブシリーズ)

かわいくて超切ない、女子高生同士の片想いストーリー

校内で優等生として名をはせる女子高生・純夏には、人に言えない秘密があった。それは、友人の同級生・汐に「恋してる」こと。汐も「女の子が好きな女の子」だというのに、純夏の気持ちにはまったく気付いていないのだった……。ちょっと変わった恋愛観を持つ少年少女たちの、甘酸っぱい思春期を爽やかに描いた学園ドラマ。待望の第一巻が登場。

というあらすじ(以上Amazonより引用)の、切ない学園もの。いやあ、よかった。胸の真ん中にきゅんきゅん来るぜー!

『ささめきこと』のここがスゴい

1. あのキスシーンを見てくれ!

部屋中転がり回りたくなるほど切ないキスシーンがあります。ヒントは「ウルトラマンのお面」。泣きました、もう。

2. 恋の障害は「同性同士だから」じゃない

同性同士だからダメなわけではなくて、「自分が相手の好みのタイプと違っていること」が恋の障害だっていうのは新しいです。んでもって、リアル感があると思いました。

だって、セクシュアリティが同じなら即うまく行くってわけじゃないですもん。男女の恋だって、お互い異性愛者ならそれだけで好き同士になれるってもんでもないでしょう? 女のコ同士だって、セクが云々よりまず「その人がその人だからこそ好きになる」ものだし、そして、「その人がその人だからこそうまくいかない」つらさがあるんですよね。そこが鮮やかに描き出されているところに感動しまくりました。

3. 純夏が実は超カワイイ

背が高くてスポーツ万能、おまけに空手も黒帯という純夏ですが、実は顔立ちも悪くないし、風間を思うあまりの言動がいじらしくて超カワイイんですよこの人。同級生のレズビアンカップルにはそれをきっちり見抜かれていて、

「しかし村雨君の風間君を見る目がなあ」
「ねー 今にもとって食べちゃいそうっていうかー」
「熱かったり切なかったり」
「野獣だったり子犬だったりー」

と的確に評されているところがまた笑えます。純夏がこのようにいじらしくかつ愛らしい人であるからこそ、それにまったく気付かない風間へのやきもき感も強まるわけで、切なさはもう天井知らず。たまらんです。

4. 「なんちゃってレズ」がいない

風間はいわゆる「カワイイ女のコが好きな(あるいは、カワイイ女のコが好きな自分に酔う)ヘテロ女子」ではありません。ノンケが女のコに振られてあんなに号泣したりする(第1話)もんかい。また、先述の「同級生のレズビアンカップル」も、そう。よくある漫画的な「ヘテロ同士で男と女ごっこをしてじゃれている女子カップル」ではなく、いかにもそのへんにいそうな――というか、ガチな人である自分にとってとてもリアルな肌触りを持ったカップルでした。そこがしみじみと嬉しかったです。

まとめ

かわいくて切なくて、それでいてリアル感がちゃんとある学園ラブストーリー。ウルトラマンのお面のキスシーンに君も泣け。